単身女性の住宅購入ニーズは、高水準にある。背景にはさまざまな事情があると思うが、購入する一番大きな理由は老後の住まいを確保するというものだ。単身だからこそ老後に備えて着々と行動を起こすことは、一般に生活設計に堅実な女性ならではの考え方だといえるのではないだろうか。
しかし、単身女性は男性に比べて住宅ローンの審査が通りにくいとよくいわれる。そもそも給料自体が低いことも多く、まだ日本では昇進の可能性が低い面もあり、さらに非正規雇用が多いといった理由からだろう。その一方で、女性の貯蓄額は男性より多いというのも事実だ。2009年総務省の「男女、年齢階級別貯蓄の状況」によれば、30代を除いて女性の貯蓄額が高いことが示されている。
女性の平均年収は男性と比べて低い。つまり、年収に対する貯蓄率から考えると、圧倒的に女性の貯蓄は多いといえる。
住宅の購入に当たって、貯蓄額が多ければ頭金に充当する金額も多くなり、月々の返済額を軽くすることが可能になる。これは返済が滞る可能性が低いという意味だ。三井住友不動産レジデンシャルの「モチイエ女子project」では、持ち家女子はコツコツ努力家で、資格も多く保有しているというアンケート結果を公表している。そういう堅実さを評価し、「女性向け住宅ローン」を提供している金融機関があることもうなずける。
「女性向け住宅ローン」といっても基本的な仕組みは通常の住宅ローンと同じであるが、付加サービスを提供しているケースが目につく。具体的なケースとして、一定期間の保険料を無料や半額にしたり、出産後の金利優遇などのサービスを提供している。りそな銀行では、女性向けに「凛 lin 」という商品を取り扱っており、これはフラット35を利用するローンだ。
フラット35は住宅金融支援機構との提携ローンであるため、金融機関による大きな違いは生じない。だが、融資事務手数料や金利などは申し込む金融機関によって異なる。「凛 lin 」は、この融資事務手数料を割り引くサービスだ。
フラット35の融資事務手数料は、一律3万円、5万円と設定している金融機関もあれば、融資価格の1%、2%といった場合もある。融資事務手数料が低くても金利が高い場合もあり、一概に比べることができない。手数料を含めた総返済額でフラット35同士を比べてみるとよいだろう。
女性のためのコンシェルジュ
そんなフラット35を主力商品として取り扱うアルヒ株式会社は、住宅ローン専門の金融機関だ。同社は、今年8月3日から新しく女性向けサービスを提供する予定だという。「ARUHI With Woman(アルヒ ウイズ ウーマン)」という新サービスは、特別に女性のためのコンシェルジュデスクを設置する。同社代表取締役兼CEOの浜田宏氏いわく、住宅購入を検討する女性のために親身になって相談に乗ってくれる専門家によるサービスだ。
このサービスは住宅ローンのみならず、返済計画、家や不動産会社の選び方などもアドバイスし、場合によっては購入そのものを再検討していただくこともあるという。ローンを押し付けるのではなく、あくまでも顧客サイドに立ったサービスを提供するのが目的だ。
「ARUHI With Woman」には、就業不能や失業に備える保険特約に保険料半額で加入できるサービスもある。住宅ローンを組んだ場合、団体信用生命保険へ加入するのが一般的である。これは、死亡した場合に保険金が支払われることで、残存する住宅ローンを完済するものだ。
しかし、病気等で仕事ができなくなることもあるだろう。そのような場合、ローンを支払いたくとも収入がないという最悪の事態が想定される。ローンを組む際には、病気やけが、失業などで支払いが滞ってしまうリスクを回避する保険への加入も、同時に検討する必要があるだろう。
実際に購入する家が決まり、住宅ローンを組む場合、固定金利のほうが安心と考える人も多いだろう。なぜなら、固定金利の場合は、将来の金利上昇リスクを回避することが可能だからだ。特に金利が低い現在、固定金利のフラット35を利用することは理にかなっているともいえる。
なお、住宅ローンを借りる際には、「いくら借りられるのか」ではなく、「いくらなら無理なく完済できるのか」という観点を持つことが大切になる。固定資産税などの税金や修繕費用など、ランニングコストにも目を向けて、快適な住環境と幸せな生活を手に入れてほしい。
(文=横川由理/ファイナンシャルプランナー)
参考URL:「ARUHI With Woman」