東芝は先週(21日)、揺れ続けてきた粉飾決算疑惑について記者会見し、事態の究明のために設置した「第三者委員会」の調査報告書を公表するとともに、経営責任を明らかにした。
報告書によると、PCやテレビ、インフラ工事など主要分野で、コストを先送りして利益を水増しする利益操作が横行しており、税引き前利益ベースでの操作額が2009年3月期から14年4-12月期までで合計1562億円に上るという。この経営責任を明確にするため、田中久雄社長ら歴代3人のトップが辞任し、室町正志会長が暫定的に社長を兼務する体制に移行することも発表した。
しかし、早くから指摘されていた原子力事業関係のM&A(合併&買収)に伴うのれん代や保有株の資産価値の検証がすっぽりと抜け落ちた。加えて、監査法人がなぜ、不正を見過ごしたかという点の検証も生ぬるい。
このように2つの大きな問題をきちんと究明しないままでは、歴代トップの辞任によってけじめの体裁だけを整えて、不祥事の幕引きを狙ったと受け止められても仕方がないだろう。
発覚からの経緯
東芝の粉飾決算疑惑は、関係者が今年2月に証券取引等監視委員会へ対して行った内部通報が発端とされている。決算発表もできないまま6月25日に定時株主総会を開く事態になり、田中社長は「創業以来最大の危機」と繰り返した。当初、「500億円程度の営業利益の下方修正」と報じられていた修正額も膨らむ一方で、幅広く関心を集めるようになっていった。
調査報告をまとめた第三者委は、5月8日に東芝が設置したものだ。同社は4月3日付で室町氏を委員長とする「特別調査委員会」を設置していた。しかし、「さらなる調査が必要」で「ステークホルダーの皆様からの信頼性をさらに高めるため」に必要として、第三者委員会を設置した経緯がある。
報告書によると、決算修正額の内訳は、東芝の自主チェック分が44億円、第三者委の認定分が1518億円。主な手口は、長期プロジェクトの採算を管理する「工事進行基準」と呼ぶ会計処理で損失計上を先送りするものや、パソコンの部品などを下請け企業に押し込み販売して利益をかさ上げするものなどがあった。税引き前利益は前述した問題の期間合計で5650億円。利益操作金額は、この3割近くに相当する。
報告書は、経営トップの責任が重大と決めつけた。「チャレンジ」と称する過大な収益目標を掲げて部下にその達成を強いたため、担当者らはその目的に沿うかたちで利益を操作せざるを得なかったというのだ。再発防止のために、少なくとも幹部職員(例えば部長職以上)については、関与の程度などを十分に検証して懲戒手続きを含む人事上の措置を適切に講じることが望ましいと提言し、事態を速やかに収拾するよう迫っている。