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町田徹「見たくない日本的現実」

東芝粉飾決算疑惑、隠された2つの重大な問題 体裁だけの幕引き狙うも、騒動は続く

文=町田徹/経済ジャーナリスト
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 WHを含む原子力事業ののれん代や保有株の簿価の妥当性に加えて、死に体だった半導体関連工場などの資産価格精査も不可欠だ。こうした資産の精緻な調査なしに信頼回復はない。

 ここへきて、新聞報道は問題になった1562億円とは別に、「事業の収益性の低下を反映させ、12年度決算を中心に半導体やパソコン事業などで計700億円規模の減損損失を計上する可能性がある」(7月21日付日本経済新聞)と、一部の資産価格を精査する可能性があると報じている。これを例外なく全資産で行うべきなのである。

会計監査人の責任

 もうひとつ、報告書で首をかしげざるを得ないのが、会計監査人に関する記述だ。調査目的ではないとしながら、「会社組織による事実の隠ぺいや事実と異なるストーリーの組み立てに対して、独立の第三者である会計監査人がそれをくつがえすような強力な証拠を入手することは多くの場合極めて困難である」と、かばうことに腐心しているからだ。

 会計士は、会計監査のプロである。今回問題になった利益操作を結果的に見逃しただけでなく、原子力事業に加えて、もうひとつの大黒柱である半導体事業が死に体になっていた東芝の経営を監査して、疑わしい会計処理がいくつも存在したことを明らかにできなかった責任は重い。

 要所で監査の状況を監督しているはずの金融庁にも今さら監査法人の責任を追及しにくいといった雰囲気があり、東芝を担当した新日本有限責任監査法人の幹部たちは「逃げ切った」と胸をなで下ろしているという。憂うべき事態といわざるを得ない。

 東芝粉飾決算をめぐっては、米国の個人投資家が同社の株価下落で損失を被ったとして、6月4日付で米カリフォルニア州の連邦地裁に提訴した。これとは別に米法律事務所が東芝株保有者に訴訟への参加を募る動きもあるという。集団訴訟になれば、巨額の損害賠償を要求される可能性がある。まだまだ騒動が続きそうな雲行きである。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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