がんばって良い商品をつくっているのに、なかなか売れない。良いサービスを提供しているはずなのに、客が定着しない。
「がんばっているけれど利益が上がらない」という経営者や個人事業主の悩みは、今のビジネスの限界を示しているといえる。高度経済成長期の「つくった分だけ売れる」前提のビジネスモデルではなく、新たな仕組みをつくり上げないといけないのだ。
では、そのために必要なことは何か。ジェトロ認定貿易アドバイザー(現:AIBA認定貿易アドバイザー)の資格を持つ輸入ビジネスアドバイザーの大須賀祐氏は、著書『価格はアナタが決めなさい。』(集英社)でひとつの答えを出す。
それは、「価格を自分で決められる立場になる」ということだ。
自分で価格を決めて、差別的優位性を高めれば儲けはどんどん増える!
「価格を自分で決められる立場になる」とはどういうことか? なぜ、それで利益が大幅に上がるのか?
それを説明する前に、少し落ち着いて考えてみてほしい。「なんとかして売り上げを伸ばしたい!」と考えたときに、まず思いつくことはなんだろうか。多くの人は、「価格を下げて全体の売上高をアップさせる」という方法であるはずだ。
しかし、大須賀氏は「あなたが中小零細企業主であるならば、それだけは絶対にやってはいけません!」と強く述べる。なぜなら、価格競争は体力勝負。大企業がその気になれば、確実に負けてしまうからだ。
では、どうすればいいのか。その方法とは、差別的優位性の高い商品を提供することだ。差別的優位性が高ければ、「高値であっても購入したい!」と思う人が出てくる。高いお金を出しても購入してくれる客がいれば、自分で価格をコントロールすることが可能になる。
差別的優位性の高い商品もしくはサービスを提供している事例を、本書から紹介しよう。
製造業で50%の利益率を誇るキーエンス
大阪にあるキーエンスは、自動制御機器や計測機器、情報機器や光学顕微鏡・電子顕微鏡などを開発・製造販売している企業だ。販売先は一般消費者ではなく企業。つまり、B to Bのビジネスを展開しているが、営業利益率はなんと50%を誇る。製造業では10%でも高収益といわれるので、この数字がどんなにすごいかわかるだろう。
なぜキーエンスは成功を収めているのか。その理由のひとつが、製造をすべてアウトソーシングし、自社は徹底したマーケティングと営業、そして「世界初」「日本初」「業界初」を生み出すための研究開発のみに注力しているからだと、大須賀氏は考える。
「世の中にない新しい商品や、顧客のニーズにベストフィットした製品を開発し続けていく」という点に特化した戦略が、キーエンスの最大の武器なのだ。
メーカーに転じ、価格設定できる立場になったユニクロ
ユニクロならば、その名を聞いたことがあるだろう。実はもともとユニクロはメーカーではなかったが、あるときSPA(Specialty store retailer of private label apparel=生産機能を持ったアパレル専門店)という概念を取り入れ、自社開発の商品・ブランドを店頭で展開し始めた。他社メーカーのつくった衣料品を販売するだけの立場のままでは、仕入れ値に左右されてしまい、自由な価格設定をすることができなかっただろう。