(「武田薬品工業HP」より)
豊富な有力開発品を持つ外資系~日本の新薬の75%に
3月12日に東京都内で開かれたファイザー日本法人の業績会見で、梅田一郎社長は「12年に、既存薬の適応症追加も含めて7品目の承認取得を目指す」と誇らしげに語った。とくに、患者や医療機関から創薬ニーズが高いがんの領域では、進行非小細胞肺がん治療薬「クリゾチニブ」と、腎細胞がん治療薬「アキシチニブ」の承認申請を済ませている。新薬を継続的に投入することで、さらに日本での成長を見込んでいる。
ファイザー役員陣の口が重かったのは、高コレステロール血症治療薬「リピトール」の特許切れにより、ジェネリック医薬品が参入したことの影響を聞かれたときぐらいなもの。外資系製薬企業は製品ごとの国別売上高を開示しないケースが多い。マイナスな話となったとたん、口が重くなるからだ。
近年、日本政府は、画期的な新薬に対して薬価を加算する優遇策「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を10年度から試験導入するなど、製薬会社のイノベーションを後押しする姿勢を見せている。しかし、これに呼応したのは外資系製薬企業だった。各社、海外で展開する製品群を続々と日本で販売している。いまや、日本の新薬の75%は外資系の開発品といわれているほどだ。
国内で医薬品を販売するには、国内での臨床試験(治験)が必要だ。しかし、開発費に加えて医療機関、被験者との協力を得ることに膨大なエネルギーが必要とされ、多額の費用もかかる。ことに日本はこうしたコストが割高なことで知られ、販売を承認する厚生労働省も厳しい審査基準を設けていた。これらがネックになり、過去、外資系製薬企業は日本での治験に消極的だった。
この現状に大きな変化が出てきたのだ。新薬創出加算の導入のほかにも、海外でも医療費削減の波が押し寄せ、高齢化を背景に成長し続ける日本の医薬品市場は、魅力的なマーケットとなったのである。さらに治験でも新薬の導入に対して、外資系企業に対する厚労省の協力的な姿勢がみられ、海外で使われている薬が日本では承認されていない、いわゆる「ドラッグ・ラグ」の現象がほぼ解消された、といわれる。ファイザーだけでなく、グラクソ・スミスクラインやアメリカのイーライリリーなども新薬投入のペースを上げ、その数を増やしている。
不安の多い国内製薬企業~生き残りをかけたワンランクアップの経営力
いっぽう、迎え撃つ内資系企業には不安な要素が多い。武田は国内で既存薬の適応追加を含め15年までに11の製品投入を見込むが、競合が多い生活習慣病関連の治療薬だったり、市場規模がさほど大きくない薬ばかりの面もある。ニーズが高いがん治療薬も少ない。第一三共も同様で、がんに画期的な新薬がない。唯一、アステラス製薬ががん分野の開発品群で健闘している程度だ。