中国で事業展開していた子会社で不正会計が発覚したLIXILグループは、英国経営者協会理事長のバーバラ・ジャッジ氏を社外取締役に招いた。同社では外国人の取締役は初めてだ。
ジャッジ氏は2012年9月から東京電力の原子力改革監視委員会の副委員長を務めている。東電の社外取締役でもあるLIXILの藤森義明社長と昨年9月、国際会議で女性の活躍について意見を交換。藤森氏や創業家出身の潮田洋一郎会長が社外取締役への就任を打診し、彼女が快諾した。
潮田氏は「LIXILグループがグローバル企業へ移行するにあたり、大いに貢献してくださることと確信します」とのコメントを発表した。
ババをつかまされた中国の衛生陶器メーカーの買収
今年4月1日、藤森氏は「変革への新たなステージ」と宣言、LIXILグループはグローバル企業に変身するべく新体制に移行した。水回り(衛生陶器、ユニットバス、水洗金具)、ハウジング(窓サッシ、エクステリア、玄関ドア)、ビルディング(カーテンウォール)、キッチン(システムキッチン)の世界共通の4事業と、流通・小売り、住宅・サービスなど国内だけで展開している事業に再編した。国内はひとつに大きく括った。
各事業のトップは外部から招聘し、最高経営責任者(CEO)に就けた。組織再編で事業会社LIXILの取締役10人のうち4人が外国人。10人中9人がヘッドハンティングなどで入社した“傭兵部隊”となった。日本企業で、これほど経営者のプロ化を進めた事例は、ほとんどない。
しかし、グローバル企業へ移行するために、新体制で走り出した途端に躓いた。中国で衛生陶器や水栓金具を手掛けていた子会社、ジョウユウで不正会計が発覚したのだ。ジョウユウは14年にLIXILと日本政策投資銀行が共同で買収した独水栓金具大手グローエの子会社で、フランクフルト証券取引所に上場しており、会計事務所大手のグラント・ソントン・グループの監査証明もあった。買収時には、経営陣が現地に赴いて創業者に会い、専門家が調査を行うなど、「デューデリジェンス(資産査定)はしっかりやった」と同社関係者は説明している。
ところが、ジョウユウの創業者らは監査直前に銀行預金を増額するなど、巧妙な手口で赤字を偽装していた。5月にジョウユウが破産手続きに入り関連損失は拡大。LIXILグループは14年3月期から3年間で最大660億円の損失の計上を迫られた。
海外のM&A(合併・買収)を成長の柱に据えた藤森氏のグローバル戦略に綻びが生じた。