銀行に求められる“発想の大転換”
長めの目線で考えると、横浜銀行と千葉銀行は、提携によりビジネスの常識を根本から変えることを目指しているだろう。世界の金融業界では、ソフトウェア開発に関する意識が高まっている。将来的には、銀行免許を持ったソフトウェア会社が増える可能性がある。銀行が必要なソフトウェアを開発するのではなく、ソフトウェアを用いて新しい金融サービスを連続的に生み出していくことが重視されている。
すでにリーマンショックの前後から米ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は、情報工学などの学位を持つ人材を確保してきた。ウォール街では自動取引プログラムの導入とともに、システムを管理するエンジニア需要が高まっている。一方で、株式などのトレーダーの数は減っている。
ICTを用いた新しい金融ビジネスの創出は、世界的な変化だ。国内の銀行業界は、この変化に適応しなければならない。各行は経営基盤を強化し、長期の目線で人材を確保し、ソフトウェア開発力を高める必要がある。それは、銀行が蓄積してきた信用審査などのノウハウをクラウドファンディング向けに生かすなど、新しいサービスの創造につながるだろう。
それだけではない。日本の人口減少に伴い、企業はより高い成長が期待されるアジアの新興国など、海外進出を強化する。これは大企業だけでなく中小企業にも当てはまる。それは、地銀が収益を獲得するチャンスにもなる。そのチャンスをつかみ、生かすためには、海外展開を進めてきた大手行との業務提携や、異業種からの専門人材の登用などの必要性が増す。
横浜銀行と千葉銀行が、他の企業や金融機関を巻き込みつつ、どのような取り組みを進めていくか、今後の展開は興味深い。重複する業務の効率性を高めるなどしてシナジー効果の発揮を狙うことに加え、世界経済の変化に適応するためにも、銀行業界における業務提携などの重要性は高まる。このように考えると、両行の業務提携の先には、さらなる展開も十分に考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)