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また、別の書店担当者は語る。
「東京の書店組合に入っている書店は、76%で仕入れることができる。しかし、買い切りの正味としては大きすぎる。返品リスクが高いので発注は抑えた」
さらに、ある都内の書店担当者はこう反発する。
「紀伊國屋が都内の老舗書店と組織する書店団体『悠々会』経由であれば、70%で仕入れることができると聞いた。買い切りであれば、せめて30%の粗利は欲しいので妥当な卸正味。しかし、一部の書店だけが恩恵を受ける構図は理解できない。そのうえ、仕入れ先が取次以外にもあることが、公になっていないのも納得いかない」
ほかにも「出版社と直取引で仕入れている書店もあると聞いた。仕入れ先の情報が錯綜していて、取次の担当者もよくわかっていないようだ」など、紀伊國屋のやり方に反発する声が続出しているのである。
紀伊國屋は、リスクを冒して9万部を買い切り、「リアル書店が一丸となって販売する新しいスキーム」を標榜しているにもかかわらず、他の書店の目は冷たい。ある取次関係者は話す。
「村上本については、日販とトーハンが合計で5万1000部を取り扱うようだ。大阪屋分を除いても、残り3万部以上はある。紀伊國屋書店や丸善、悠々会の書店だけで本当に売り切れるのだろうか」
今回の紀伊國屋の行動が、果たして今後の出版業界に大きな変化をもたらすことになるのか。村上本の売れ行きに注目が集まる。
(文=佐伯雄大)
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