大塚家具の業績悪化が止まらない。8月9日に発表した2019年1~6月期の単独決算は、最終損益が24億円の赤字(前年同期は20億円の赤字)だった。1~6月期としては4年連続の赤字で、経営再建が進んでいない状況が浮き彫りとなった。
売上高は前年同期比26.3%減の138億円。店舗数の減少と既存店の売上高が減ったことが響いた。19年6月末時点の店舗数は13店で、1年前から6店減った。既存店売上高は深刻な状況が続いており、1~6月は各月、前年同月比で8~21%の大幅減だった。昨年9月下旬から11月下旬まで実施した「在庫一掃セール」の反動が影響した。
最終損益は、前年同期に不動産や有価証券の売却で特別利益16億円を計上した反動が出た。
営業損益は23億円の赤字(前年同期は35億円の赤字)だった。不採算店の閉鎖による賃借料の削減や人件費の抑制が寄与し、赤字幅は縮小した。
大塚家具は業績を回復させるため、日中間の国境をまたぐネット通販(EC)を手がけるハイラインズなどとの資本業務提携で中国市場の開拓を狙うが、効果は未知数だ。また、たとえ効果が出るにしても時間はかかる。そのため、国内事業の立て直しが急務だが、そのメドはいまだに立っていない。
さまざまな施策も停滞感
もちろん、大塚家具はただ手をこまねいていたわけではなく、さまざまな対策を講じてきた。だが、その多くが行き詰まりを見せている。
まず挙げられるのが、EC事業だ。大塚家具は自社の通販サイトを運営する一方で、 ほかのネット通販会社との連携も広げている。17年にヤフーとロコンドで販売を始めたほか、18年にはアマゾンで寝装品や小型家具の販売を始めている。これらにより、18年12月期の売上高は前年同期比69.1%増の3億9600万円と大きく伸びた。だが、19年1~6月期は1.8%増の1億7400万円にとどまっている。売上全体の1%強の規模にしかなっていないにもかかわらず、早くも頭打ち感が出ているのだ。
住宅事業者などとの提携販売も、成長に急ブレーキがかかった。18年12月期の売上高は前期比52.3%増の81億円と大きく伸びた。しかし、19年1~6月期は苦戦した。提携先からの紹介が伸び悩み、売り上げが失速したという。この提携販売は、新規受注の取りやめなどで16年12月期までは減少が続いていたが、それ以降は新規受注に注力したことで上昇傾向が続いていた。しかし、ここにきて失速してしまったのだ。
提携販売は苦戦するようになったが、一方で勝機もある。家電量販店最大手のヤマダ電機との連携がそのひとつだ。両社は2月に業務提携し、以降、大塚家具はヤマダ電機の店舗に家具の供給や販売員の派遣を進めてきた。7月に改装オープンした「インテリアリフォームYAMADA前橋店」(群馬県前橋市)では、大塚家具の家具や絨毯、寝装品など約900点を展示した。同店が成功すれば、連携を拡大させることで大きな収益を生み出すことができる可能性もある。だが、未知数な部分が多く、将来を計算することはできないだろう。
コントラクト(法人向け販売)事業も厳しい状況だ。20年の東京オリンピックに向けてホテルの新規開業や改装で需要が見込めるとして、販売を強化してきた。18年12月期は特需が発生し、売上高は前年同期比60.4%増の32億円と大きく伸びた。だが、19年1~6月期は11億円にとどまっており、進捗状況は良くない。特需は18年12月期だけの一時的なものに終わっている。もっとも、19年1~6月期は前年同期比3.9%増で、悪化したわけではない。ただし、前年同期が8.2%増だったことから、伸び率は鈍化していると見ることができる。19年7~12月期も前年同期を下回る見込みで、停滞感が漂う。
高級ブランド品の販売が伸びる
こうした周辺事業で行き詰まるようになったこともあり今後が懸念されているわけだが、やはり主力事業である大塚家具店舗での販売の不振が最大の懸念材料だろう。リストラ面では一定の成果が出ているものの、肝心の成長戦略面では成果を出せていない。
もちろん、店舗販売の面でも対策は講じている。昨年3月から、イタリア高級家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」を専門に扱う店舗の出店を始めたほか、今年4月には米国の高級ベッドブランド「シーリー」の商品を販売するなど、消費者の取り込みを図っている。
こうした施策の一部では、成果も出ている。たとえば、「ポルトローナ・フラウ」の今年5月の販売数量は、前年同月比18%増と好調だったという。同月ではほかにも英国の高級ソファブランド 「アートフォーマ」が46%増、ドイツの高級ソファブランド「ロルフベンツ」が8%増と、それぞれ伸長した。4月には、スイスの高級ソファブランド「デセデ」が31%増と大きく伸びている。
だが、これは皮肉な話だ。大塚家具は、社長の大塚久美子氏と父親で創業者の大塚勝久氏が経営権をめぐって争った“お家騒動”後、幅広い顧客層を取り込むために従来の高価格帯中心の品ぞろえを改め、中価格帯の商品も増やす改革を進めてきた。しかし、既存店売上高はマイナスが続き、不振から脱却できていない。そうしたなか、「ポルトローナ・フラウ」など高級品が好調となっていることで、価格帯を下方にシフトさせた戦略が間違っていたといわれても仕方がないのではないか。
大塚家具は深刻な販売不振が続いているが、元凶はお家騒動によるブランド価値の低下だ。それにより大塚家具を敬遠する人が増えた。そこで、久美子社長は自らが発起人となって、家具の業界団体「『スローファニチャー』の会」を設立。その後、久美子氏は勝久氏を訪ね、同団体の名誉会長への就任を要請した。お家騒動以来4年ぶりの再会で、親子和解への機運が高まった。和解を演出することで、低下したブランド価値を再び高めたい思惑があったのだろう。
だが、勝久氏は「団体の目的について十分な説明がない」として要請を断り、和解には至らなかった。ブランド価値の回復もままならならず、むしろ、和解失敗でさらなるブランド 価値の低下を招いた感さえある。
大塚家具は、販売不振から脱却するメドは立っていない。さらに、現金枯渇懸念が払拭できていないのも悩みのタネだ。6月末時点の現預金は31億円で、一時期よりは若干改善したが、100億円以上あった頃と比べると心もとない。また、19年1~6月期の営業キャッシュフロー(CF)はマイナス29億円と、前年同期から約9億円マイナス幅が拡大した。商品を売るなどの営業活動で現金を稼ぐ力の衰えが鮮明となっている。営業CFのマイナスは、定期預金の払い戻しや株式の発行などでなんとか補っているが、それも限界がある。
大塚家具は、販売不振からの脱却が急務だ。筆者は「父娘和解」が一番の近道だと思っているが、なにかしらの抜本的な対策を講じることが求められている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。