7月末に発生した上海株ショック。突然の株価暴落の余波は大きく、各国の株式市場は不安による暴落の連鎖を引き起こした。2カ月近くが経過した現在も、日経平均株価は依然として1万7000円台をさまよっている。
加えて中国経済の現状と先の見通しの不透明さが、世界中に経済不安の種をまき散らすこととなった。さまざまな経済レポートを読むと、中国の経済指標に対する不信感も含めて中国経済の先行きについては悲観的なものも多い。今回はこうした状況下における中国の航空需要の動向についてみていきたい。
今の中国経済は消費経済が主体ではなく、投資と輸出を中心とした経済のため、消費経済のひとつである航空需要が必ずしも中国経済の全体像を反映するというわけではない。しかし、その最新情報から見えるものは、中国経済が「大きく落ち込んでいるとはいえない」ということである。
今回調べた元データは、中国の大手3社が株主向けに公表している月次の輸送データである。中国における航空事業は、歴史的には中央官庁のCAAC(航空局)が航空会社部分を組織の中に置き運営していた。
のちにエアライン部分は分離され、4つの航空会社が設立された。東北航空は南方航空に統合されたため、中国の主要な航空会社は現在では北京に拠点を置く中国国際航空、上海に拠点を置く中国東方航空、広州に拠点をおく中国南方航空の3社、および海南島海口市に拠点をおく海南航空の4社に集約される。旧CAAC3社の市場占有率は約70%ある。中国にはその他多数の民間航空会社があるが、それらの規模は小さいため、3社の状況が中国の航空全体の傾向を映していると考えてよいだろう。
先日公表された3社の航空需要を合計すると、以下グラフのようになる。2015年に入ってからのRPK「レベニュー・パッセンジャーキロメーター:(有償旅客数)×(平均搭乗距離)」の月ごとの対前年伸び率をグラフにしたものである。
この指標は、企業収支と連動し、また各社で株主向けに公表するものであるため、正確さについて問題はない。1月に低い伸び率を示しているが、国際線は2月に、国内線は3月に1月の落ち込みを補い、4月以降は安定した伸びが8月まで継続している。ちなみに5月以降は13%程度の安定した伸びで推移しており、上海株ショックに伴う急速な需要変化はここには表れておらず、経済の変調は見て取れない。なお、8月までの国際線・国内線トータルの累積の対前年伸び率は13.2%となっている。