ビジネスジャーナル > 企業ニュース > ほっともっと、大量閉店に陥った理由
NEW

ほっともっと、なぜ一斉大量閉店に陥ったのか?コンビニ弁当&総菜の“充実しすぎ”が脅威

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
【この記事のキーワード】,
ほっともっと、なぜ一斉大量閉店に陥ったのか?コンビニ弁当&総菜の充実しすぎが脅威の画像1
ほっともっとの店舗(「Wikipedia」より)

 持ち帰り弁当店「ほっともっと」を運営するプレナスが、ほっともっとの直営190店を9月以降に閉店すると発表し、衝撃が走った。

 プレナスは7月末時点でほっともっとを全国に約2700店を展開している。このうち直営店は約900店。同社は新店を直営で出店し、軌道に乗ればオーナーを募ってフランチャイズ化してきた。採算がとれない店ではフランチャイズ化が難しいため、採算性改善が見込めない直営店については閉店することにした。

 これに伴い、2020年2月期に店舗の原状回復費用などを追加計上する。また、連結の通期業績予想を下方修正した。売上高は1592億円から1533億円、純損益は2億4000万円の黒字から8億3000万円の赤字へ変えた。通期の赤字は2年連続となる。

 プレナスは190店を閉鎖する理由として「人件費等の店舗運営コスト上昇」を挙げた。確かに、人手不足を背景に店舗運営における人件費は上昇傾向にある。だが、理由はそれだけではないだろう。

 まずは「販売不振」が挙げられる。ほっともっと事業(国内)の既存店売上高は長らく低下傾向にある。現在、8月までの実績が公表されているが、19年3~8月累計は前年同期比1.6%減と苦戦している。それ以前では、18年度こそ1.6%増と前年度を上回ったものの、17年度が2.8%減、16年度が4.2%減、15年度が4.0%減、14年度が0.1%減と17年度まで4年連続でマイナスが続いている。

コンビニやスーパーが脅威に

 販売不振に陥ったのは、異業種との競争が激化したためだ。近年はコンビニが店舗数を大きく増やしており、ほっともっとと競合するケースが増えている。また、従来は縁遠かったドラッグストアも弁当を販売するようになったが、そのドラッグストアも近年は店舗数が大きく増えており、競合度が増している。ほっともっとはコンビニとドラッグストアに領域を侵食されているのだ。

 競合との比較において、弁当の質の差が縮まっていることも頭痛の種だ。ほっともっとは弁当を店内で調理し「できたて」を売りとしている。だが、スーパーでは店内調理でつくった弁当を販売するところが増えており、ほっともっとはお株を奪われている。

 また、コンビニは製造から販売まで低温度で管理する「チルド弁当」の質を高めており、こちらも脅威となっている。チルド弁当は定温では使えない海鮮系などの食材を活用できるほか、使用する添加物が少なくて済むといったメリットがある。加えて、日持ちの良さから廃棄ロスが少ないことも好感されている。製造技術や輸送方法の進化などでこれらの質が高まっており、コンビニ弁当とほっともっとの弁当の質の差は縮まっている。

 弁当以外の総菜が充実しているのも大きな脅威だ。おにぎり、すし、サンドイッチなどの調理パン、パスタなどの調理麺といった、弁当の代わりとなる総菜がコンビニやスーパーなどで手軽に買えるようになっている。

 日本惣菜協会によると、18年の総菜市場の規模は10兆2518億円で、9年連続でプラスとなった。このように総菜市場は拡大しているが、ただ、そのうち弁当やおにぎりなどの「米飯類」の構成比が最も大きいものの、その割合は年々低下しているという。近年叫ばれる「消費者のコメ離れ」が弁当の逆風となり、一方で米飯類以外の総菜には追い風となっているが、こうして弁当は相対的に存在感を発揮できなくなっているのではないか。

利益率低下の原因

 いずれにせよ、こうして競争が激化し、ほっともっとの販売が苦戦するようになったわけだが、それでも利益は稼ぎ出すことができていた。ほっともっと事業では16年度まで営業黒字が続き、営業利益率は毎年5%程度を叩き出していた。だが、17年度に突然、収益性が悪化し、営業利益率は3.7%にまで低下してしまった。そして18年度は営業赤字に陥っている。

 17、18年度の収益性が悪化したのは、既存店売上高の低迷の影響もあるが、それよりもコスト増の影響のほうが大きいだろう。18年度に関しては、先述の通り既存店売上高はプラスだったし、それに加えて店舗数は増えており、ほっともっと事業の売上高は前期比4.2%増の1100億円と大きく伸びている。それにもかかわらず、営業損益は8億円の赤字(前期は39億円の黒字)となった。増収は収益性の改善要因となるのだが、それ以上にコスト負担が大きかったため、赤字に陥ってしまったのだ。

 プレナスは18年度の利益が減った理由として「商品力強化への投資」「人材確保・育成への投資」「仕入れコストの上昇」の3つを挙げている。

 ほっともっとはコンビニなどに対抗するため「商品力の強化」を図っている。ほっともっとのメインターゲット層は40代の男性となるが、品揃えがこの層に集中しすぎていることが問題と判断、客層を広げるため、手薄だった女性と若年層の消費者を取り込める商品の開発に力を入れているのだ。

 女性の消費者に対しては、野菜を多く使った弁当でアプローチしている。一例として、17年度は野菜がたっぷり入った「中華あんかけごはん」、18年度は野菜を従来より2割増量した「肉野菜炒め弁当」を販売した。今年度もこの流れは継続しており、定番商品に100円サラダを添える「プラスベジ」や、野菜がたっぷり入った「野菜が摂れるビビンバ」を販売している。

 このようにほっともっとでは商品力の強化を図っているわけだが、これは諸刃の剣でもある。普段あまり使わない食材で新商品を開発すると、食材の廃棄ロスが増えるなどでコスト負担が大きくなりがちなためだ。事実、前述した通りプレナスは「商品力強化への投資」が18年度の利益減の要因だったと判断している。もっとも、たとえコストがかさんだとしても売上高が大きく増えるのであれば問題はない。しかし、既存店売上高は大して高まらず、当初計画を大きく下回ってしまった。これが響き、ほっともっと事業は営業赤字に陥ってしまった。

 こうした傾向は今年度も続いている。19年度第1四半期(19年3~5月)のほっともっと事業の売上高は前年同期比1.2%減の269億円、営業損益は1億9900万円の赤字(前年同期は900万円の黒字)だった。プレナスは利益面に大きな影響を与えた要因として「商品力強化による原価率の上昇」を挙げている。原価をかけて商品力を高めているのだが、既存店売上高は高まらず(0.7%減)、今年度に入ってもコストがかさむだけで終わっている状況だ。

 こうした状況のため、プレナスはほっともっとの直営190店を閉鎖する。これにより収益性を改善したい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

ほっともっと、なぜ一斉大量閉店に陥ったのか?コンビニ弁当&総菜の“充実しすぎ”が脅威のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!