「オリンピックそのものに対して、ボランティアで対応できるエンジニアが必要で、今後5年間で4万人のエンジニアを育てなくてはいけない」という一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)会長の荻原紀男氏(新業界団体『日本IT団体連盟』呼びかけ役 豆蔵ホールディングス代表取締役社長)の発言がブラックではないかと物議を醸している。
「五輪委員会やオフィシャルスポンサーだけでなく、日本の電気やガス、交通といった社会インフラが狙われる可能性がある。国の重要インフラを破壊されるのは、戦争と言わずになんというのか。これは最悪のシナリオであることには違いないが、日本の政府や業界、企業は、それに対する危機意識が低すぎる。
そして、これを守るためのエンジニアが不足しているのは明らかだ。そのためには人材を育成しなければならない。それが4万人。今から教育をしなくては間に合わない。だが、国はそれに対して費用を出す計画がない。
新たに設立する日本IT団体連盟では、業界がひとつになり、大きな力で国に提言するという狙いがある。まずは、サイバーディフェンスを担うエンジニアを育成するための予算を獲得する。そこで育成されたエンジニアが2020年に開催される東京五輪の開催期間中の1カ月間でもいいから、ボランティアで働くという仕組みを提案した」(「『五輪にはボランティアで働けるエンジニアが必要』発言の真意を聞く」より)
「メリットがないものに国は予算をつけない」「1カ月間、国のサイバーディフェンスのために、ボランティアで働いてもらうことで恩返しをするというのがひとつの提案だ」といった趣旨のなかでの発言なのだが、ネット上では慢性的な人材不足のブラック業界ならではの発言ではないかと指摘する声も相次いだ。
たとえば、元博報堂社員で作家の本間龍氏は「これって、五輪で莫大なカネを稼ぐ電通はじめ各企業と同じ発想。ボランティアの善意に頼って自分たちは荒稼ぎですか」とツイートする。
400億円ぼろ儲けの電通とJOC
2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックの大会運営に必要なスタッフは約8万人、それを交通費などの実費程度のボランティアで集めようと計画され、着々とボランティア募集キャンペーンが展開されつつある。ボランティアの善意を利用するオリンピックビジネスについて、本間氏に詳しい話を聞いた。
「そもそもオリンピックはアマチュアスポーツの祭典として利益度外視で開催されるものでした。その当時は、手弁当のボランティアの協力なくしてはできないものだった。しかし、1980年代以降、オリンピックのビジネス化が進み、今では巨額のマネーが動く巨大なショービジネスになった。本来ならばボランティアではなく、労働の対価となる報酬のあるスタッフとして雇うべきなんです」