オリンピックの運営は約400人の組織委員会の下、通訳や誘導など8万人のボランティアが実働部隊として働く予定だ。東京オリンピックの会期は17日、パラリンピックは13日、合計30日間。この間、報酬は出ず、弁当と会場内交通費の実費が支給される程度だという。東京オリンピックの開催時期は真夏だ。炎天下の案内となれば体力的に厳しいボランティアになりそうだ。
「1998年の長野冬季オリンピックの際のボランティアは約3万人で、そのうちの3800人は県外からでした。宿泊費のみ補助したようですが、それ以外は無給。極寒の中で深夜までの外での労働や、悪天候による競技中止で混乱が起き、観客と長野冬季オリンピック組織委員会(NAOC)の板挟みとなって蹴られるなどのトラブルに遭ったボランティアもいたそうです。2020年東京五輪は真夏の開催ですから、さらに大変でしょうね。一方で、ボランティアに指示をする組織委員会はエアコンの効いた部屋で快適に過ごし、さらに出向元の企業から月給どころかボーナスまで出るでしょう。もちろん、大手広告代理店の電通がかかわっているので、マスコミは実態を一切報じません」(同)
最前線のブラックな現場は無給のボランティア、一方で、組織委員会で中心的な役割を果たす電通は広告費でのボロ儲けが始まっている。
電通は日本オリンピック委員会(JOC)のスポンサー企業である「ゴールドパートナー」を集めている。現在、ゴールドパートナーにはアシックスやみずほ銀行など14社が名を連ねているが、この契約金は1社140~150億円。このうちの約20%を電通は管理進行料として得ることができるから、現在でも単純計算で400億円になる。このほかにゴールドパートナー、オフィシャルパートナーのCM制作、放映を独占的に扱い、それらもすべて別料金で電通の懐に入るのだ。
「ボランティア8万人に開催期間中、日給1万円を支給したとして240億円。ゴールドパートナー14社のうち2社の契約金を回してもお釣りがくる。カネは十分にある。そのカネはJOCと電通の内部に消えていくのでしょう」(同)
実際のボランティアの募集は16年から始まる予定だが、すでに、着々と「誰もが『日本代表』」「ボランティアで『おもてなし』」などと、ボランティアをPRするようなニュースが目立つようになっている。
東京オリンピックでブラックボランティアとは、ブラック企業が横行する日本の縮図ともいえそうだ。
(文=小石川シンイチ)