東芝は同日、旧経営陣5人を相手取り3億円の損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に起こした。会見で訴訟に関する質問が出ると、平田氏は「背後にある事実も知らされておらず、お答えすることはない。質問があれば広報に連絡してほしい」と語った。提訴に関する正式な記者会見は予定されておらず、東芝の情報公開の姿勢に改めて疑問符がついた。
株式市場が開いていない土曜日に決算発表をしたことについて平田氏は、「社外役員などに十分に説明し、理解していただくうえでの都合」と弁明をしたが、全取締役の過半を占める社外取締役が決算を決議する取締役会にそろって出席できる日を、平日で調整できなかったためだとされる。
「投資家軽視の姿勢が続けば、東証が指定した特設注意市場銘柄の解除に影響しかねない」(外資系証券会社のアナリスト)
甘すぎる旧経営陣への提訴
東芝は歴代3社長を含む旧経営陣5人に不正会計問題の賠償責任を追及する訴訟に踏み切ることで、幕引きを急ぐ。個人株主が東芝に対して9月、室町氏を含む新旧経営陣らに賠償請求するよう要求した。ルールでは60日以内に東芝が動かなければ、個人株主が株主代表訴訟を起こすことになる。個人株主が代表訴訟を起こせば、室町氏自身も対象になる。不正会計が続いていた時期に会長、取締役会議長や副社長を務めていた室町氏をなんとか訴訟の対象から外す必要があった。5人の中に含まれた村岡富美雄・元最高財務責任者を東芝は11月6日付で常任顧問から解職した。
西田厚聰氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長のほか、村岡氏、元CFOの久保誠氏が訴訟の対象になったが、請求額3億円というのは妥当性を著しく欠く。東芝は「支払い能力を考慮して3億円にとどめた」と説明しているが、すでに東京証券取引所への上場契約違約金や公認会計士費用で損害が10億円を突破している。さらに金融庁による課徴金も84億円と予想して引当金を積んでいる。
賠償の対象者の中には、高額報酬を長年得ていた3人の元社長が含まれている。たとえば西田氏の役員報酬は1億円以上の場合に開示が義務付けられた10年3月期からの5年間だけで計6億円を超えている。