粉飾会計問題を起こしたオリンパスは12年、歴代の経営陣19人に計30億円、監査役5人に計10億円の損害賠償を求め、東京地裁で係争中である。また、粉飾決算をめぐり旧ライブドアは堀江貴文・元社長ら旧経営陣を相手取り、363億円の損害賠償を請求。堀江氏は株式など208億円相当の資産を引き渡すことで和解が成立した。
個人株主の代理人を務める「株主の権利弁護団」(大阪市)の金啓彦弁護士は11月7日、「(ほかの役員に対する)株主代表訴訟の提起も検討する」と述べた。株主は歴代経営陣28人に総額10億円の損害賠償訴訟を起こすよう求めている。責任の明確化が不十分なままでは信用回復は遠い。弁護団は「なれ合い訴訟にならないよう、東芝の訴訟活動を注視していきたい」とも付け加えた。
東芝は11月7日、米カリフォルニア州の連邦地裁で提訴された田中氏や佐々木氏など複数の元取締役を相手取った集団訴訟の訴状を受け取ったと発表した。東芝は「この集団訴訟は米国預託証券(ADR)の保有者によって提訴されたが、当社は当該ADRの発行に関与していない」と説明。米国証券関連法令の適用がないことなどを理由に、年内をメドに訴訟の棄却を裁判所に申し立てる予定だ。しかし、この東芝側の主張が受け入れられるかは不透明だ。
室町氏には歴代社長同様、重い経営監視の責任があった。会長兼取締役会議長に就任していた時期の監視・監督責任は問われるはずだ。どういう根拠で室町社長は外れたのか、11月9日に公表される調査報告書の内容が注目される。
調査で不適切会計に関わった可能性があるとされた「関与者」は14人である。西田氏、佐々木氏、田中氏、村岡氏、久保氏の5人は「被告」になったが、パソコンを担当した元副社長(2人)やインフラを担当した元副社長(2人)と元執行役専務(インフラは合計3人)、テレビを担当した元執行役上席常務の責任を追及する声もある。さらに、インフラ担当の現職副社長・志賀重範氏や現執行役上席常務の秋葉慎一郎氏の処遇も注目される。
深刻な「稼ぐ力の低下」
東芝の15年4~9月決算において、会計不祥事が覆い隠してきた「稼ぐ力」の衰えは想像以上に広く深いことが判明した。公約してきた16年3月期の業績予想の公表は見送られたが、主力の半導体でさえ採算が低下している。中間決算ではパソコンや家電、半導体事業のほか、POS(販売時点情報管理)システムで巨額の損失が発生し、主要5部門のうち3部門が赤字となった。