冷静に判断すると、批判している人たちは、加工肉や赤肉の発がん性を否定しているわけではなく、グループ1やグループ2Aに分類されたことが間違っているとは言っていない。ましてや、IARCの発表に対して、科学的根拠で否定しているようには思えない。
WHOは、批判が大きくなったことを受けて「加工肉を食べないようにと言っているわけではない」という声明を発表しているが、IARCが公表したことを否定しているわけではない。食品安全委員会が言うように、分類はリスク(健康に与える影響)の高さを示しているわけではないから、WHOの言い分も「食べるなとは言わないが食べすぎるな」ということだろう。
食品安全委員会も「赤肉や加工肉のリスクが高いわけではないが、多くの種類の食品をバランスよく食べることが大切だ」と言っている。つまり「赤肉や加工肉を食べすぎてはいけない」ということだ。
以前からリスクの指摘
では、食べすぎとはどのくらいの量なのか。
IARCが大腸がんのリスクが増加するという50グラムは、ウィンナーソーセージ3本前後、ハムなら4枚前後、ベーコンなら2枚強程度になる。
国立がん研究センターは「2013年の国民健康・栄養調査では、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日当たり63グラム(赤肉50グラム、加工肉13グラム)なので、大腸がんの発生に関して、日本人の平均摂取の範囲であれば、リスクは無いか、あっても小さい」としている。
しかし、その具体的な指摘を考察する必要がある。国立がん研究センター予防研究グループが、1995年、98年から2006年まで約8万人の追跡調査をもとに発表した「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」という論文では、大腸がんのリスクについて次のように述べている。
「肉類全体の摂取量が多いグループ(約100グラム/日以上の群)で男性の結腸がんリスクが高くなり、赤肉の摂取量が多いグループ(約80グラム/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなりました。男性において赤肉摂取量によるはっきりした結腸がんリスク上昇は見られませんでした」
この結果を見ると、赤肉・加工肉を毎日100グラム(たとえば、赤肉50グラムと加工肉50グラム)以上摂取すると結腸がんのリスクが高くなるということは、IARCの発表結果を裏付けているように思える。そして、日本でも毎日100グラム以上摂取している人たちがいるということだ。その人たちは、今まで通りの食生活を送れば、結腸がんのリスクは高いということになる。