さて、家庭で子供の弁当として、いなり寿司をつくるとします。子供の出発は朝の7時です。前日の夕方に油揚げを甘く煮て、ご飯は6時に炊き上がるようにセットします。6時に炊き上がったら酢飯をつくり、油揚げの中に入れて出来上がりです。子供が昼の12時に食べるとすると、ご飯の炊きあがりから食べるまで6時間ということになります。
ところで、スーパーマーケットなどでいなり寿司、細巻き、太巻きを購入するとき、売り場で包装容器に入らずにばら売りされていれば、そのスーパーの厨房でつくったと思いますよね。
ご飯は炊き上がったものを仕入れていたとしても、油揚げの中にご飯を入れるのはスーパーの厨房で行っていると考えるのが一般的でしょう。もちろん、すべての工程を店舗内で行っているスーパーもあります。
しかし、実際には前日に工場で製造して配送されてきた寿司を売り場に並べているだけのスーパーもあるのです。ご飯は、炊きあがった時が一番おいしく、時間がたつにつれて味が落ちていきます。工場で製造する場合、朝の6時頃ご飯が炊き上がり、8時からいなりを製造し、スーパーの売り場には翌朝並びます。ご飯を炊いてから24時間以上たった物を販売している場合もあるのです。
コンビニエンスストアで売られているいなり寿司には、多くの添加物が記載されていますが、スーパーでバラ売りされているいなり寿司には添加物表示がありません。そのため添加物が使用されていないと思ってしまいますが、スーパーの厨房でつくっていないいなり寿司には、コンビニの製品と同じだけの添加物が使用されているのです。対面販売でバラ売りしている場合は、添加物表示の記載が法律上必要ないため、消費者からはわからないようになっているのです。
いなり寿司を購入する場合は、購入する店の厨房でご飯を炊いているかどうか、いつ炊いたかを確認してから購入するべきでしょう。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)