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大塚家具、倒産寸前の元凶・久美子社長続投の怪…社長退任なくしてヤマダによる再建成功なし

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
大塚家具、倒産寸前の元凶・久美子社長続投の怪…社長退任なくしてヤマダによる再建成功なしの画像1
大塚家具本社(「Wikipedia」より)

 経営再建中の大塚家具が、家電量販店最大手のヤマダ電機に身売りすることが決まった。12月30日付でヤマダ電機が大塚家具に約44億円を出資し、大塚家具の株式の51%を握ると発表された。これで当面、大塚家具の資金面の不安は解消される。だが、経営再建の道筋は見えておらず、先行きは不透明だ。

 大塚家具は現預金の枯渇危機に瀕していた。今年9月末時点の現預金はわずか21億円。現社長の大塚久美子氏が、父親で創業者の大塚勝久氏と経営権を争って勝利し実権を握った2015年には100億円以上あったので、その頃と比べると5分の1程度の水準でしかない。

 大塚家具は販売不振で資金の流出が続いていた。そのため、運転資金の獲得が喫緊の課題だった。金融機関からの借り入れで対応したいところだったが、金融機関はどこも大塚家具への融資に及び腰だったため、複数の事業会社と交渉し出資を求めたが、出資比率など条件面で折り合いがつかず、資金調達は難航していた。

 交渉が進まなかった理由は、交渉相手が大塚家具側に株式の過半の譲渡を求めたものの、久美子氏がそれを拒否してきたためとみられている。だが、現預金がどんどん減っていき、逼迫した状況に陥ったため、ヤマダ電機が株式の過半を握るかたちでの出資を受け入れざるを得なくなったのが実情だろう。

 大塚家具はヤマダ電機からの出資によって、当面は資金面の不安は解消されるが、販売不振から脱却できなければ資金は右から左に流れるだけだ。しかし、販売不振から脱却できる兆しは見えていない。

 11月の既存店売上高は前年同月比25.5%減と大幅マイナスだった。10月も23.5%減と大きく落ち込んだ。今年1~11月で前年を上回ったのは9月のみ。それ以外はすべてマイナスだ。10月と11月 が大幅マイナスだったのは、前年の水準が「在庫一掃セール」で高かったことと、10月の増税前の駆け込み需要の反動が出たことが影響したためだが、それを考慮しても厳しい状況と言わざるを得ない。

久美子氏が経営者になってから業績悪化

 大塚家具は久美子氏が15年に経営の実権を握った頃から、業績が深刻なほどに悪化し始めた。それ以前は深刻な状況とまではいえなかった。

 時計の針を少し戻して、00年代からの業績の推移を見てみたい。08年のリーマン・ショックまでの年間売上高は700億円前後で横ばい状況が続き、成長が見られなかったものの、大きく落ち込んでいるわけではなかった。ただ、08年のリーマン・ショックで大きく悪化した。08年12月期の売上高は前期比8.2%減の668億円に落ち込んだ。そして、11年12月期(543億円)まで減収が続いた。

 しかし、それ以降の売上高は浮き沈みがありながらも上昇傾向を描き、15年12月期には580億円まで回復している。リーマン・ショック前の水準とはいかないが、直後の09年12月期(579億円)は上回っている。最終損益は11年12月期から15年12月期まで5期連続で黒字を確保していた。

 ところが、16年12月期は販売不振で業績が大きく悪化した。売上高は前期比20.2%減の463億円と大幅減収となり、最終損益は45億円の赤字(前期は3億5900万円の黒字)に転落した。それ以降、業績悪化が止まらず、18年12月期まで3期連続で最終赤字を計上している。18年12月期の売上高は前期比9.0%減の373億円だった。

 販売不振の背景には、家具市場の低迷と競争激化がある。少子高齢化で住宅市場の縮小が続き、それに伴い家具市場は低迷が続いている。その一方でニトリなど低価格を売りとする大手家具チェーンが台頭し、競争は激化している。

 ただ、これらの影響は徐々に出てくるものであり、突然の業績悪化につながるものではない。16年12月期に突然として業績が悪化した最大の要因は、久美子氏の経営のまずさにほかならない。

 もっとも大きな要因としては、経営権をめぐって父娘が争った「親子喧嘩」でイメージが悪化したことが挙げられる。これにより「実の父娘が争った企業の家具を部屋に置きたくない」といったマイナスイメージが広がり、客足が遠のくようになった。

 また、それ以降の不振は、久美子氏が打ち出した中価格帯商品の拡充やセールの乱発によって「安売りする家具屋」とのイメージが広がったことも大きく影響している。間口を広げるために、従来より低価格帯の品ぞろえを強化したほか、「お詫びセール」や「在庫一掃セール」といった割引セールを乱発したため、高価格の家具を求める従来の顧客が離反してしまった。

 いずれも久美子氏が起因になっている。これほどの失敗を犯せば、一般的な企業であれば経営責任を取らされるが、久美子氏は社長辞任といった誰もが納得するかたちでの責任を取ってこなかった。そして、ヤマダ電機の傘下に入ったあとも社長は辞任せず続投するという。

有効な成長戦略はなし

 はたして久美子氏のもとで経営改革は断行できるのだろうか。これまでは店舗網の縮小などリストラを中心に経営改革を実行してきたが、リストラはだいぶ進んだため、これ以上のリストラはなかなか難しいだろう。今後、もっとも求められるのは「成長戦略」だ。だが、有効打になりそうなものは見えてこない。

 ヤマダ電機傘下入りの発表に合わせて、提携によって得られる資金の使途が示され、そこには成長戦略とおぼしきものがあるにはあった。親娘喧嘩によるマイナスイメージの払拭と「低価格にシフト」したというイメージの払拭のための宣伝広告のほか、ネット販売の強化、店舗改装などに資金を振り向けるというが、これらが成長戦略といえるだろう。ただ、これらは従前に打ち出していたものと変わらず、ヤマダ電機との協業を考慮したかたちに多少の修正はするとしても、目新しくはない。

 成長戦略面では、このほかに中国市場の開拓を進める考えを示している。だが、計画は当初の想定より遅れているといい、当面は収益のあてにできそうもない。

 そうなると、頼みの綱となるのはヤマダ電機との協業だ。両社は今年2月に業務提携を結び、大塚家具はヤマダ電機に家具を供給してきた。ヤマダ電機は主力の家電販売が頭打ちの様相を呈しているため住宅関連事業を収益の柱にしようとしており、家電と家具の併売を進めている。そうしたなか、大塚家具の製品が加われば品ぞろえに厚みが増すため、収益向上が期待できる。大塚家具としては販路が拡大するため、同じく収益向上が見込める。

 ただ、提携による大塚家具の売り上げは「規模は小さい」(大塚家具)のが現状だ。今後はヤマダ電機の店舗網をフル活用することで収益向上が期待できるだろうが、安売りする家電量販店で大塚家具の中価格帯以上の家具が売れるかは、見通しが効かない面がある。提携がうまくいかない可能性は小さくはない。

 大塚家具は、ヤマダ電機からの資金調達で当面の資金繰り不安は解消された。だが、販売不振から脱却できなければ、また資金繰りに窮すことになりかねない。これからの1年間が正念場となりそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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