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しまむら、店舗レイアウト変更失敗で底なしの客離れ…ユニクロはヒット不在でも増収の無敵

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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しまむらの店舗(「wikipedia」より)

 ファッションセンターしまむら(以下、FCしまむら)の販売不振が止まらない。既存店売上高は前年割れの月が続いている。フォーエバー21が2019年10月に日本市場から撤退したり、アメリカン・イーグルが19年内に全店を閉鎖するなど、カジュアル衣料品業界は厳しい状況が続いている。しまむらも苦境にあえいでいるが、このまま沈んでしまうのか。

 FCしまむらの19年12月の既存店売上高は前年同月比9.0%減で、4カ月連続のマイナスだった。8月こそわずかに前年を上回ったが、7月までは15カ月連続マイナスで、19年3~12月期の既存店売上高は前年同期比6.0%減だ。19年2月期まで2年連続でマイナスが続いており、今期も3年連続のマイナスとなる公算が大きくなっている。

 ユニクロとは対照的だ。ユニクロの国内既存店売上高は堅調に推移。19年8月期は前期比1.0%増で、7年連続プラスとなっている。

 FCしまむらの既存店の不振が影響し、運営会社のしまむらの業績も厳しい。12月24日に発表された19年3~11月期連結決算は、売上高が前年同期比3.8%減の3943億円、本業のもうけを示す営業利益は8.1%減の189億円だった。3~11月期の減収営業減益は3年連続となる。

消費者の“わくわく感”を奪ったFCしまむら

 もちろん、しまむらは対策を講じてきているが、成果が出ていないのが現状だ。

 しまむらの苦戦の要因はいくつかある。まずは、売り場の回遊性を高めるために全店規模で売り場レイアウトを変更したことが挙げられる。棚を低くしたり通路を広くしたが、それに伴い品ぞろえを絞ることになり、しまむらの魅力のひとつである「宝探し」の要素が低下してしまった。消費者はしまむらの売り場に「わくわく感」を感じることができなくなってしまい、客足が遠のく結果となった。

 極端な品ぞろえの絞り込みは、消費者から買い物の楽しみを奪ってしまうことになる。それはディスカウントストア「ドン・キホーテ」の例を見るとわかる。

 ドンキは売り場の回遊性が決して高くはないが、圧倒的な品ぞろえによって「わくわく感」を演出できている。後者のメリットが前者のデメリットを上回っているので、多くの消費者からの支持を獲得できているというわけだ。仮に、ドンキが回遊性を高めるために品ぞろえを絞ってしまったら、おそらく今の繁盛を保つことはできないだろう。

 もちろん、回遊性は高いほうがいい。一番望ましいのは、回遊性が高くて品ぞろえが豊富であることだ。ただ、この2つを両立させることは、現実的にはかなり難しい。どちらかをあきらめざるを得ないケースが大半だ。その場合、どちらが重要かというと、大手チェーン店の場合は間違いなく品ぞろえだ。

 だが、しまむらは品ぞろえを絞ってしまった。これにより売り上げが減ってしまっている。たとえば、18年3~8月期がそれを端的に表している。しまむらによると、極端な品ぞろえの絞り込みで顧客に不信感を与えてしまい、結果として売り上げを落とすことになってしまったという。

ユニクロが安定的な売り上げを保持できる理由

 こうした状況に対して、しまむらは手をこまぬいているわけではない。買い物の楽しさとバラエティ感を強めるため、その後はアイテム数を増やして品ぞろえの充実化を図った。ただ、アイテム数を増やすと在庫がだぶつくリスクが高まる。そこで、アパレルメーカーや生産工場と連携して生産サイクルを見直すことでリスク低減を図った。具体的には、女性用衣料品の約2割を40日程度の生産サイクルに短縮することで、売れ筋商品を迅速に追加投入できるようにしたほか、販売動向に応じた在庫調整をできるようにし、在庫がだぶつくことを回避しようとしている。

 それでも、抜本的な状況改善には至っていない。やはり、売りとなる商品がないことが大きいだろう。売れる商品がないのにアイテム数を増やしても、収益は高まらない。むしろ、管理コストがかさんだり値引き販売が増えたりして収益性が下がってしまう。また、売り上げが増えるとも限らない。

 実際、最近のしまむらは大規模なセールを打っても売り上げが上がらないという現象が起きている。18年3~8月期に「誕生祭」や「感謝祭」などのセール企画を開催し、目玉商品を前面に打ち出して集客を図ったが、客数は期待したほど伸びず客単価も低下し、売り上げ向上にはつながらなかった。18年3~8月期の既存店売上高は、前年同期比6.9%減と大きく落ち込んでいる。

 これは、商品に魅力が乏しければ、価格が安くなっても消費者はわざわざ店に足を運ばないということを示している。こうしたセールは売り上げが上がらないだけでなく、収益性の低下も招いてしまう。18年3~8月 期の連結業績の収益性は大幅に悪化した。売上高は前期比3.0%減の2756億円、営業利益は40.0%減の143億円と減収減益で、売上高営業利益率は8%から5%に低下した。

 他方、ユニクロの業績が堅調なのは、売れる商品があるためだ。これまで、「フリースジャケット」「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」といったヒット商品を生み出してきたが、それらが定番商品に育ち、今は看板商品となって収益に大きく貢献している。

 売れる商品、看板商品を生み出すには、ユニクロの事例からわかるとおり、一度ヒットさせる必要がある。

 ところで、フリースジャケットなどのヒット商品がユニクロで生まれたのはだいぶ前で、最近はこれらに匹敵するヒット商品を生み出せていないとの指摘がある。その指摘は確かだが、こうしたかつてヒットした商品が進化を遂げ、今は定番商品・看板商品となって収益に貢献している。これらによって、しばらくヒット商品はなくても、安定した売り上げを上げることができているのだ。前述した7年連続の既存店売上高の前年超えがその証左といえるだろう。

しまむらがヒット商品を生み出せない原因

 話をしまむらに戻すと、今のしまむらが苦戦を強いられているのは売れる商品がないためだが、それはヒット商品を生み出せていないことが大きい。かつて「裏地あったかパンツ」がヒットしたことがあるが、ヒット商品は圧倒的に少なく、看板商品といえるものはほとんど見当たらない。

 こうしてみると、しまむらが不振から脱却するにはヒット商品を生み出す必要があるといえそうだが、実際は相当難しいだろう。

 ファッションの販売で重要な要素となるのが「おしゃれ感」と「機能性」だ。だが、しまむらは、この2つが弱いと言わざるを得ない。機能性に関してはユニクロがダントツだ。繊維メーカーの東レと組むなどして高機能素材を生み出し、商品開発を行ってきており、機能性の面では一日の長がある。ヒット商品となったフリースジャケットやヒートテック、ウルトラライトダウンは、いずれも保温性が優れているといった高機能を売りとしている。しまむらが機能性の面でユニクロを上回るのは、かなり難しいだろう。

 そうなると、勝負すべきはおしゃれ感となるわけだが、それも高い壁が立ちはだかる。それは、しまむらがおしゃれなブランドと認識されていないことだ。それは、立地に問題があることといえる。

 しまむらは郊外ロードサイドを中心に出店を重ね、成長してきた。都心部にも店舗はあるが、数は少ない。言うまでもないが、おしゃれ感を発信するには郊外ロードサイド店よりも都心店のほうが適している。そのため、都心店が少ないしまむらがおしゃれなイメージを演出することは難しい。これは、しまむらが商品力を高める上で大きな障害となっている。

 一方、ユニクロはおしゃれ感の演出もできている。ユニクロは、初めはしまむらと同じく郊外ロードサイドで成長したものの、途中から原宿や銀座といった都心の一等地にも出店し、それを皮切りに都心部にも多く出店してきた。これら都心店でおしゃれ感を発信したことにより、都会的でおしゃれなイメージの演出に成功している。

 ZARAやH&Mなどファストファッションの店舗が都心部に多いのは、ユニクロと同様におしゃれ感を発信・演出するためだ。しまむらは立地で、おしゃれ感を演出できていない面が多分にある。これは商品力の低下につながっている。また、ヒット商品を生み出すことができていない大きな要因にもなっている。

 しまむらが今後ヒット商品を生み出して収益を上向かせるには、思いきって都心の一等地に出店をすることも必要ではないだろうか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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