新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり全国紙の編集委員が発言した内容が、物議を醸している。
朝日新聞編集委員の小滝ちひろ氏は13日、自身のTwitterアカウント上で「あっという間に世界中を席巻し、戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」と投稿した。
「朝日新聞デジタル」に記載されている小滝氏のプロフィールによれば、小滝氏は奈良をベースとして主に文化財と古社寺を担当しているという。プロフィール上には小滝氏のTwitterアカウントへのリンクがはられているが、当該リンクをクリックすると「@chihiroktk」というプロフィール名と共に「This account doesn’t exist」と表示され、すでにアカウントは削除されている模様。削除前には小滝氏の似顔絵と共に、「朝日新聞編集委員(社寺・文化財担当)」などのプロフィールが書かれていた。
現在世界中で感染拡大が続きWHO(世界保健機関)がパンデミック(感染症の世界的流行)宣言を行ったばかりの新コロナウイルスについて、全国紙の編集委員という責任ある立場の人物が「痛快な存在」と発言したことを受け、インターネット上では次のような批判の声があがっている。
「朝日新聞の編集、世界規模の不景気と死者出ても『痛快』と形容する」(原文ママ、以下同)
「人でなし」
「朝日新聞は非常に政権に対して潔癖な立場で批判をされておるわけですが、こんな発言一つでその潔癖な朝日新聞は廃刊を決断しても良いのではないか?」
「仮にも日本を代表する大新聞社、朝日新聞の編集委員と称する方が、この状況を『痛快』と表現してしまう。当然ながら一番困っているのは社会的な弱者なのだが… レトリックだとしても稚拙に過ぎるだろう」
「5000人近くの方が亡くなられているというのに『痛快な存在』って…」
「罹患した方や関係者、経済的損害を被っている事業者と消費者に対して、身内でも今まさにその取材に駆けまわっている若い記者にもそれを言えるのだろうか」
今回の小滝氏の言動について、全国紙記者は語る。
「全国紙の記者は、20~30代前半でも中央省庁の局長や事務次官クラス、大企業のトップ、さらに番記者として首相や大臣と直接話す機会もあり、極めて“権力に近い”状況に置かれる。そのため、変なエリート意識を持って勘違いをしてしまう記者も少なくありません。特に朝日新聞は全国紙のなかでも自他ともに認めるエリート新聞社で、“霞ヶ関よりも東大出身者の比率が高いんじゃないか”ともいわれるほど。
最近でこそ下がっていますが、30代で年収が1千万円台に乗り、庶民とはまったくかけ離れた感覚の人間も多いと感じます。今回問題となっている投稿も、本人は少しウィットを効かせた表現をしたつもりになっているのかもしれませんが、こういう投稿がシャレでは済まされないということに気づかない感覚が、やはり世間とはズレていますよね」
朝日新聞社広報は14日、今回の小滝氏の投稿について、次のように見解を発表している。
「朝日新聞記者の小滝ちひろ編集委員が13日、ツイッターに不適切な投稿をしました。本社は、報道姿勢と相容れない行為だったと重く受け止め、専門的な情報発信を担う『ソーシャルメディア記者』を取り消しました。本人が説明やおわびなしにアカウントを削除したことも不適切でした。深くおわびします」
(文=編集部)