無料通信アプリ大手LINE(ライン)に関東財務局が立ち入り検査に入ったと報じられた。スマートフォン用ゲームで使う一部のアイテム(道具)が資金決済法で規制されるゲーム上の「通貨」に当たるとの指摘があったにもかかわらず、仕様を変更して規制対象外となるよう対策を行った疑いが持たれている。
筆者は、この資金決済法という言葉を聞いて、かつて役人時代に関東財務局の理財部長をしていた時を思い出した。理財部は多くの金融法規を所掌しているが、資金決済法の前身である前払式証票規制法によって、ある案件を処理したことがあるのだ。
前払式証票とはいかにも固い法律用語であるが、商品券・プリペイドカードといえば誰でもわかるだろう。筆者の関わった案件とは、あるスーパーが商品券を大量に発行してそのまま営業が立ち行かなくなり、商品券購入者から苦情が寄せられたというものだった。
商品券の会計処理では、まず発行時に負債側に商品券としてその発行額を掲げ、同時に資産側に同額の現金を計上する。その後、商品券が商品・サービスと交換されるたびに減額され、売上が計上されることとなる。つまり、商品券が使われるまで現金保有(銀行預金でもいい)があるのが通常だ。
このため、商品券金額を供託してもらっても、経営には問題は生じない。供託といっても資産を取り上げるわけではなく、商品券発行者の資産のまま。銀行預金でも信託でもかまわないので、企業経営上の支障はまったく出ない。前払式証票規制法では、未使用商品券残高の半額を供託することになっていた。商品券残高の全額でも支障がないので、半額を供託してもらっても当然ながらなんの問題もない。
ところが、筆者の関わった案件では、商品券発行で得た資金を当座の資金繰りで利用していたのだ。案の定、商品券をつかまされた顧客は商品購入ができずに大きな損失が出てしまった。
上場計画に影響も
現在の資金決済法では、古典的な商品券・プリペイドカードだけではなく、今回のようなゲーム上の「通貨」もサーバ型前払式支払手段として規制対象になっている。報道によれば、LINE側の未使用残高は約230億円で、長期未使用顧客分を除いたとしても、供託金は数十億円にもなるという。