セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が、次の株主総会で辞任すると表明した。鈴木会長はセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を交代させる人事案を取締役会に諮ったが、否決されたことを受けて退任を決意した。
鈴木氏は記者会見で、役員会での井阪氏の発言が「(セブン-イレブンの運営を)いかにも1人でやってきたかというような発言だった」と憤りの言葉を述べた。今回の人事案が通らなかった理由については、「7年間最高益を続けた社長を辞めさせることは、世間の常識が許さないという一点のみ」と説明した。
だが、人事案が否決された理由はほかにも指摘されている。
たとえば、大株主である米ヘッジファンドのサード・ポイントは、鈴木氏が自身の次男を後継者にしようとしていることを懸念し、人事案が否決されるよう動いたとの情報がある。また、創業家の伊藤雅俊名誉会長や、幾人かの社外取締役が鈴木氏の暴走に歯止めをかけたとの見方もある。
最終的に引き金となった理由が何かは不明だが、さまざまな思惑が複雑に絡まった末の退任表明劇なのかもしれない。鈴木氏には、言いたくても言えないこともあるだろう。また、真実ではないことが報道されている可能性もある。
セブン-イレブンの過去5年の実績
鈴木氏は「世間の常識が許さない」と語っていたが、井阪氏の交代は世間が認めないのだろうか。セブン-イレブンが公表しているデータなどを使って、数値面で判断してみたい。結果のすべてが井阪氏の功罪ではないが、最大の責任者であることは間違いない。
まずは、自営店売上高と加盟店売上高を合わせたチェーン全店売上高を見てみる。
セブン-イレブンの15年2月期のチェーン全店売上高は4兆82億円となった。11年は2兆9476億円、12年は3兆2805億円、13年は3兆5084億円、14年は3兆7812億円と右肩上がりで推移している。
競合のローソン、ファミリーマートと比較してみると、ローソンの15年2月期のチェーン全店売上高は1兆9327億円、ファミリーマートは1兆8601億円となっている。
ここでは、絶対額以上に増加率のほうが重要な指標となるだろう。11年2月期と比較した、セブン-イレブンの15年2月期の増加率は35.9%、ローソンは14.8%、ファミリーマートは29.1%となっている。セブン-イレブンの増加率が際立って高いことがわかる。この5年で減少したことはなく、一貫して上昇している。