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村井英一「お金の健康法」

増加する「住宅型有料老人ホーム」の見極めポイント…“献身的”なほど要注意な理由

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
増加する「住宅型有料老人ホーム」の見極めポイント…“献身的”なほど要注意な理由の画像1
「gettyimages」より

 高齢者の増加とともに、有料老人ホームへ入居する人が増えています。比較的料金が安い特別養護老人ホームへの入居が難しく、やむなく民間が運営する有料老人ホームを選ぶ人もいますし、よりよいサービスを求めてあえて料金の高い有料老人ホームを選ぶ人もいます。そのなかで介護保険サービスの利用料が別建てとなっている「住宅型有料老人ホーム」が増えていますが、はたして利用者にとっては“お得”な施設なのでしょうか?

「介護付きホーム」と「住宅型ホーム」

 自治体などが建設し、福祉法人が運営するのが特別養護老人ホームです。そのため、料金が安価なのですが、入居希望者が多く、なかなか入居できないのが実情です。それに対して、株式会社でも建設・運営できるのが有料老人ホームです。料金はまさしくピンキリですが、入居の際に数百万円の入居一時金が必要となる施設も多くあります。サービスの充実度合いもピンキリで、手厚い介護を求める人向けの高級な施設もあれば、特別養護老人ホームに入居できない人がやむなく入る、比較的安価な施設もあります。

 この有料老人ホームは、大きく2つのタイプに分けられます。1つは「介護付き有料老人ホーム」(以下「介護付ホーム」)です。文字どおり介護サービスがセットになっており、入居すると常に介護職員の介護が受けられます。料金は介護保険の自己負担だけでは足りずに、上乗せのサービス費がかかるのが一般的です。実際にどれくらい介護されているかはともかく、24時間介護が前提ですので、入居さえしてしまえば家族としては安心です。

 一方、介護サービスが“別建て”となっているのが「住宅型有料老人ホーム」(以下「住宅型ホーム」)です。原則としては、食事や家事サービスの提供のみを行えばよく、介護についてはサービスを提供する義務はありません。介護が必要な場合は、介護保険制度を利用して、外部の訪問介護業者のヘルパーに来てもらいます。

 ただ、実際に外部のヘルパーが施設の中に入って、食事や入浴の介助を行っている施設はむしろ例外的です。施設を運営する会社が、同じ建物内で訪問介護事業を行っていて、その職員がヘルパーとして介護を行うことが多くなっています。施設の職員と介護ヘルパーの区別がないホームもあり、一見すると介護付ホームと見分けがつかないぐらいです。常にそばに介護ヘルパーがいるので安心ですが、自由に外部のヘルパーを依頼することはできず、介護サービスの利用を1つの事業者で抱え込んでいるともいえます。

住宅型ホームのメリット・デメリット

 介護付ホームが常に介護がセットになっているのに対し、住宅型ホームは施設の利用(住まい、食事、生活サービス)と介護サービスは別の扱いとなっています。介護保険の制度上では、自宅で生活している人が、介護が必要な場合にヘルパーに来てもらい、介護サービスを受けるのと同じ扱いです。

 そうは言っても、自宅で生活しているのとはわけが違います。自宅の場合、介護が終われば、ヘルパーは帰ってしまいますので、決まった時間しか介護職員はいません。しかし、有料老人ホームであれば、そこで生活していますので、常に介護職員が身近にいるか、少なくとも施設の職員はいるわけです。ヘルパーの介護サービスを受ける時間以外であっても、何かあれば、職員が駆けつけてくれます。

 福祉の分野で働く人は献身的な人が多く、規定の時間外だからといって、放っておくことができません。その結果、施設職員や介護職員がオーバーワークで介護をしてくれることが多く、料金以上のサービスを受けられるというメリットがあります。

 ただ、施設によっては「負担が大きすぎる」と、介護保険で定められた枠以上の料金を求められることがあります。家族としては、状況を見ていないため、施設に求められると応じざるを得ないのがデメリットです。介護保険の枠を超えると、全額が本人の自己負担となり、料金が急上昇します。

どのような施設かを見極めて

 このように住宅型ホームでは介護の負担が重くなると、事業者側にも本人・家族にも負担がかかることがあります。介護保険制度の規定で割り切れない部分の負担を誰が請け負うのかが不透明なのです。その部分を献身的に引き受けてくれる事業者が良いとも一概に言えない面があります。有料老人ホームの倒産が少なくないからです。介護保険制度で賄いきれない部分をオーバーワークで負担してくれる事業者ほど経営は厳しく、経営破たんのリスクを抱えています。事業者ががんばってくれているうちはよいのですが、倒産となれば、全員退去という事態もありえます。

 では、なぜ事業者も入居者もリスクがある住宅型ホームがつくられているのかというと、自治体によって介護付ホームの建設が制限されているからです。民間企業が建設・運営する有料老人ホームでも、自治体の許可がなければ新設できません。介護保険サービスをフルで利用することになる介護付ホームは、自治体にとっては負担となります。そのために新設が制限されたり、厳しい条件を付けられることがあります。介護付ホームが新設できず、やむなく住宅型ホームとして開設した施設は少なくありません。

 しかし、住宅型ホームもけっして悪いことばかりではありません。使い方次第では、介護付ホームよりも費用を抑え、自分に合ったサービスを受けられます。それほど介護が必要ない場合は、介護保険サービスの利用を抑えることができ、常に介護サービスを利用する介護付ホームよりも安上がりです。また、あらかじめ上乗せのサービス費を徴収することで介護保険にこだわらないサービスをしてくれる施設もあります。

 住宅型のホームは、施設によってかかる費用やサービスがまちまちです。原則と実態が異なるために、施設の状況をよく見極めて選ぶことが大切です。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

Facebook:@eiichi.murai.39

Twitter:@coreca

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