日本電産の永守重信会長兼社長は、経営再建中のシャープの元幹部を積極的にスカウトしている。2014年にシャープ元社長の片山幹雄氏を副会長に招いたのを皮切りに、前副社長の大西徹夫氏が5月1日付で入社した。
1979年にシャープに入社した大西氏は、経理畑の出身で2003年に取締役経理本部長に就いた。太陽電池事業を統轄した後、欧州・中東欧本部の副本部長を務め、14年に副社長に就任。シャープは13年に策定した中期経営計画で、メインバンク主導による再建を目指したが、大西氏が銀行との折衝窓口となった。
15年の株主総会後に取締役を退き、副社長執行役員として液晶事業の構造改革を担当。官製ファンドの産業革新機構の出資を受け入れるべきと主張する「革新機構派」の1人といわれてきた。しかし、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りが3月末に正式決定したため、顧問に退いていた。
革新機構が進める、中小型液晶ディスプレイのジャパンディスプレイ(JDI)との統合に大西氏は前向きだったとされる。シャープが革新機構の出資を受け入れていれば、大西氏が引き続きJDIとの交渉を担った可能性があった。ところが、ホンハイが逆転勝利したためシャープに居場所がなくなった。
今、シャープの元幹部が日本電産へ大量に移籍している。
シャープは15年9月末に希望退職を実施、約3200人が応じた。45歳以上が対象だったが、20~30代の退職も目立つ。
シャープの元常務執行役員の広部俊彦氏は、15年12月に日本電産の子会社である日本電産テクノモータの取締役専務執行役員に就いた。広部氏は片山幹雄氏が手掛けた堺工場の運営会社(現・堺ディスプレイプロダクト)の社長などを歴任した。
日本電産は5月1日付の人事で、シャープで液晶テレビの再建を担っていた毛利雅之氏を執行役員に登用するなどシャープ脱藩組を厚遇している。
永守氏は「(シャープの)部長級の採用は100人を超えた」ことを明らかにし、「希望があれば300人ぐらいは採用したい」と語っている。
永守氏が、シャープの元幹部の採用に積極的なのには理由がある。精密小型モーターから車載、産業用の中型・大型モーターに経営の軸足を移したからである。