新型コロナウイルスが蔓延し、社会が混乱するなかの4月13日に、4代目となるトヨタ自動車の新型「ハリアー」がデビューした(発売は6月頃を予定)。もともと専門誌を中心に4月にデビューするのではないかと言われていたが、新型コロナウイルス問題が発生し、なおかつ、すでに7都府県に緊急事態宣言が発出(今は全国へ拡大)された段階で、「新型ハリアーは本当にデビューするのか?」といった疑問が多く聞かれていた。しかし、情報通り、新型ハリアーは4月にデビューした。
ハリアーは1997年に初代モデルがデビュー。当時、日本国内ではレクサスチャンネルは開業していなかったので、海外での“初代レクサスRX”のトヨタブランド版としてデビューしたといっていいだろう。カムリ系プラットフォームをベース、つまり乗用車系プラットフォームをベースとしたクロスオーバーSUVとなる初代ハリアー(世界市場での初代レクサスRX)のデビューは、世界の自動車メーカーにまさに衝撃を与えた。
当時のSUVというのは、トラックシャシーベースの武骨なモデルばかり。そこに登場したRX(ハリアー)というクルマに世界の自動車メーカーは衝撃を受け、追随するモデルを相次いで市場投入した。アメリカでは、ある自動車雑誌主催のカーオブザイヤーで賞をあげようとしたのだが、アメリカでは今でもSUVは小型トラックにカテゴライズされることもあり、イヤーカーは厳しいとして、“SUVオブザイヤー”というものを新設したといった話も聞いている。
2003年の2代目まで、ハリアーはレクサスRXの国内仕様としてラインナップされたが、13年にデビューした3代目は当時の「RAV4」と基本コンポーネントを共用し、レクサスRXとは分離されることとなった。
3代目は地域を限定して輸出していた、ほぼ国内専売モデルにもかかわらず、正規輸出されていないASEAN諸国でも正規輸入されているのではないかと思うほど、多数目撃(日本から個人輸出が積極的に行われた)されていた。
新型ハリアーの販売が“手堅い”理由
そして、今回登場したのが4代目新型ハリアーである。「このタイミングでデビューして大丈夫なのか?」という声も聞かれるが、そこはハリアーのような人気モデルにとっては、それほど影響がないと考えられる。
それは、歴代モデルが継続的に高い人気を維持し、歴代モデルの現有ユーザーが多いことが、まず挙げられる。13年にデビューした3代目ハリアーの19年までの累計販売台数は約31万台にも及び、年間平均販売台数は5万台強、月販平均台数は約4200台となっている。3代目の月販目標台数が2500台なので、目標に対して約1.6倍となるヒットモデルとなった。
4代目への乗り替えを勧めるメインターゲットは3代目ユーザーとなるが、19年までで約31万台という販売実績の多さもあり、3代目をメインとした歴代ハリアーユーザーへの代替え促進活動だけでも、今のような厳しい社会状況のなかとはいえ、意外なほど予約受注も確保できるのではないかと考えられる。
注目すべきは、発表が4月だったが発売は6月頃というところ。仮に6月から発売となれば、発売日次第ということもあるが、予約受注車であっても納車は7月あたりがもっとも早くなり、その後は新型車のすでに“お約束”ともいえる納期遅延が発生すれば、本格的な納車は9月以降となる可能性が高い。
季節が秋にもなれば、少々楽観的な考えにもなるかもしれないが、新型コロナウイルスの感染状況についてだけいえば、今よりは落ち着きを見せていることも十分考えられる。
新型ハリアー、ライズに匹敵するヒット車に?
さらに、5月からのトヨタ全系列での全店全車種扱いスタートも、ハリアーの販売を後押ししていくことになりそうだ。新型ハリアーのデビューは全店全車種扱いスタートの“旗頭”的存在といってもいいだろう。今までハリアーを扱っていなかった、トヨペット以外の、トヨタ店やカローラ店、ネッツ店では、人気モデルを新規で扱えるのはウエルカムなのは当たり前。特に、顧客層の近いトヨタ店にとっては、ハリアーが扱えることはより歓迎することになるだろう。
3代目がトヨペット店専売で月販目標2500台なので、全店扱いとなり、仮に月販目標5000台とすれば、年間目標販売台数は6万台となる。さらに、3代目では月販目標台数の1.6倍で販売台数が推移したことを考えると、年間販売台数で9.6万台、月販平均台数で8000台と換算することも可能となり、今大ヒットとなっている「ライズ」に迫る販売台数も期待することができるのだ。
ハリアーがライズ並みに売れれば、ハリアーはライズよりはるかに台当たり利益も多いので、トヨタやトヨタ系ディーラーはまさに“ウハウハ”状態になるのも、決して夢物語ではない。
歴代モデルの販売実績に裏打ちされた歴代モデルからの乗り換え客をベースに、新たにハリアーを購入してくれる新規客をどこまで上積みできるかが、カギを握ってくることになるだろう。
社会状況は厳しさを増しているが、逆に感染予防の観点から、都市部でも通勤なども含めてクルマでの移動機会も増えており、クルマへの注目が高まってきている。基本的には新車販売も厳しい状況下にあるが、市場環境がまったくの絶望的なものともなっていないのである。
(文=小林敦志/フリー編集記者)