トヨタ自動車「カローラ」は2019年9月に国内仕様としては初めて、セダンとツーリング(ステーションワゴン)が3ナンバーサイズとなるフルモデルチェンジを行った。
見た目はグローバルモデルと同じイメージを採用するものの、全長を短く、全幅を狭めることで日本専用としているのが大きな特徴。後輪ダブルウィッシュボーンサスペンションや、4輪ディスクブレーキ、安全運転支援デバイスなど装備の充実、内外装の質感アップもあわせて“これでカロ―ラなの?”と思ってしまうほど格段のレベルアップを行い、世間に衝撃を与えてデビューしたといってもいいだろう。
まさに、新時代“令和”に合わせて一新を図ったカローラシリーズだが、販売現場で「2020年も新型カローラシリーズメインで登録車での年間販売台数ナンバー1を狙っているようなのです」との話を聞いた。暦年(2020年1~12月)なのか事業年度締め(2020年4月~2021年3月)なのかは、はっきりしていないようだが、とにかく年間販売台数トップを狙っているというアナウンスはなんとなく販売現場に伝わっているようだ。
自販連(日本自動車販売協会連合会)統計によると、2019事業年度(2019年4月~2020年3月)締めでの登録車販売台数において、カローラは11万4358台を販売してトップとなっている。しかし、2019年4月から8月までは先代モデルの販売台数としてカウントされるので、フルモデルチェンジ後も先代モデルが併売されているとはいえ、現行新型カローラメインでのフルカウントとしての年間販売台数トップも引き続き狙っているようなのである。
新型カローラのセダンとツーリングがデビューしたとき(2019年9月17日)、すでにラインナップされていたハッチバックモデルのスポーツも改良を受け、この3つのボディタイプを合算した月販目標台数を9400台と発表している。
やや不安定なカローラの販売台数推移
別表は、自販連統計をもとに、現行シリーズとなってから初めてのフルカウントでの販売月となった2019年10月から2020年3月までの月別販売台数の推移をグラフに表したものとなる(併売されている先代カローラ<アクシオとフィールダー>も含む)。
これによると、2019年10月、11月、12月はいずれも登録車だけでのランキングで販売トップを維持しているものの、年明けから急ブレーキがかかり、2020年1月は月販目標販売台数を下回り、年度末決算セール期で新車がよく売れる2月もわずかに目標販売台数を上回る結果となった。しかし、3月には1万6327台を販売して、再び登録車販売トップとなっている。
2019年中は快調に飛ばしており、年が明けて3月には再び登録車販売トップとなったものの、1月と2月は息切れムードが漂っており、やや不安定な販売台数推移になっているともいえよう。
そのなか、4月上旬に聞いた話では“G-Xプラス”なる特別仕様車が近々設定されるとのことである。廉価グレードとなるG-Xは、その上となるSやW×Bに比べると、廉価グレードとはいえ、装備内容が充実していない印象が目立っていた。
詳細な内容はわからないものの、“プラス”というぐらいなので、G-Xベースにして追加装備で装備内容の充実を図ってくるのではないかと考えられる。G-Xはレンタカーなどのフリート販売や、特にツーリングでは、ステーションワゴンがフィールダーと呼ばれていた時代から、廉価グレードは“貨客兼用”として法人ユースも目立っていたので、特別仕様車の設定は一般ユーザーへ向けるだけでなく、そのあたりへの販売強化も狙っているのかもしれない。
さらに、5月とされているようだが、現行モデルでは設定のないCDやDVDディスクの再生が可能なプレーヤーがディーラーオプションで追加設定になるとのこと。現行モデルではディスプレイオーディオを全車標準装備とし、スマホに音楽アプリからダウンロードした曲を再生することはできるのだが、音楽CD再生機能がオプション設定すらされていないことへの不満が高まり、売れ行きに多少なりともブレーキをかけているのではないかともいわれていた。
ユーザー世代の若返りを意識した現行カローラだが、歴代モデルからの代替えユーザーも含め、やはりメインとなるユーザー年齢は“オジサン”と呼ばれる世代が圧倒的に多いこともあり、CD再生機能の未設定は物議を醸していた。
特別仕様車の設定や、CD&DVDディスク再生機能の追加オプション設定などによる商品力をアップする動きは、販売へのまさに“カツ入れ”といっていいだろう。
トヨタの全店舗全車種取り扱いが後押しに
今後も年間販売台数トップを狙うカローラは販売台数の推移で見るとやや旗色が悪いようにも見えるが、思わぬ援軍が現れる。それは、全国のトヨタ系ディーラー全店舗でのトヨタ車全車の取り扱いスタートである。
すでに東京では一足早くスタートしていたのだが、全店舗全車種扱いが5月より全国でも展開されることが発表されて久しい。ただ、すでに4月上旬から事実上の前倒しをして、全国規模での全店舗全車種扱いがスタートしている。
カローラはカローラ店の専売車種であったが、トヨタ系ディーラーの別チャンネルとなる、トヨタ店やトヨペット店、ネッツ店でも取り扱いがスタートすることになる。取り扱い店舗が増えることにより販売台数も増えていくのは必定で、これが継続して販売台数トップを目指すカローラの最大の助け舟となりそうなのである。
たとえば、人気車種の「シエンタ」は先代モデルではカローラ店の専売車種であり、先代がマイナーチェンジしたときの月販目標台数は3000台であったが、現行モデルはトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店、つまりトヨタ系ディーラーすべてで取り扱われるようになり、デビュー時の目標販売台数は7000台と倍以上に増えている。
現行カローラに当てはめると、現状9400台が全店舗扱い後には1万8800台になるともいえるのだが、シエンタは人気の高いミニバンだったので目標も2倍になったといえる。セダンやステーションワゴンが販売メインとなるカローラは全店舗扱いにより、少々低く見積もって1.5倍ぐらいに目標販売台数が増えるとしても、1万4100台へと増えていきそうである。
カローラ同様に、今まで専売車種だった「クラウン」や「アルファード」「ヴェルファイア」「ランドクルーザーシリーズ」なども全店舗扱いとなるが、クラウンやランドクルーザーを扱っていなかった某トヨタ系ディーラーセールスマンは「全店舗扱いになり、クラウンやランドクルーザーをすぐに売れと言われてもなかなか難しい面がありますが、カローラは新たな扱い車として増えると売りやすいですし、セールスマンとしても頼もしい存在になるといえますね」と語ってくれた。
カローラ新規取り扱いの大きなメリット
現状ではセダンとステーションワゴン、そしてハッチバックをラインナップするカローラだが、いずれも今までカローラを扱ってこなかったトヨタ店やトヨペット店、ネッツ店では直接的に“被る”モデルはなく、しかもネームバリューも高く売りやすいというので、取り扱い車種として増えるのは非常にメリットがあるということのようだ。
このあたりを新車販売業界に詳しいA氏に聞くと、以下のように語ってくれた。
「すでにネッツ店では、ウィッシュのユーザーからツーリングへの引き合いが目立っているとも聞きます。セダンも5ナンバーサイズながら、同サイズに近いプレミオやアリオンがありますが、モデルとしては古すぎるのでカローラセダンを新規で扱えるのは魅力的のようです。
トヨタでカローラ以外に純粋にトランクを持つセダンは、プレミオ&アリオン、カムリ、クラウン、センチュリー、ミライとなりますからね。ハッチバックのスポーツもCセグメントハッチバック車はトヨタ車ではほかにないので、たとえばトヨタ店では、クラウンユーザーの社長さんの奥様用などのセカンドカーニーズなども期待できますし、比較的若年ユーザーの多いネッツ店では、ターボやMTがあるので新規で扱える魅力は高いようです」
次回は、新型コロナウイルスが自動車販売現場に与える影響などを踏まえて、カローラが年間販売台数トップになる可能性について見ていきたい。
(文=小林敦志/フリー編集記者)