新型コロナウイルスの感染拡大により株式市場が混乱。上場廃止の予備軍が急増している。東京証券取引所は4月1日付で時価総額が10億円を下回ったとして9銘柄を上場廃止に向け、猶予期間入りに指定した。今後9カ月、月間平均の時価総額と月末の時価総額が10億円に届かないと上場廃止となる。
指定された銘柄は、樹脂加工大手の児玉化学工業、国内ESCO(エネルギー削減保証)事業の草分けである省電舎ホールディングス(HD)、インターネット検索結果上位表示を請け負うアウンコンサルティングなどいずれも東証2部上場企業。対象企業は3カ月以内に事業計画改善書を提出する必要がある。
児玉化学は2度目の上場廃止期間入り
事業再生ADR手続きによる再建を目指している児玉化学工業の上場廃止猶予期間入りは今回で2回目となる。三菱ケミカルホールディングス系列(三菱ケミカルHDが第2位の株主で9.5%を保有。19年9月末時点)だった児玉化学は、いち早く海外に進出。タイや中国で樹脂成型事業を展開してきた。国内市場は需要の低迷が続いているため、アジアでの拠点づくりを加速。12年、インドネシアとベトナムに合成樹脂の成型工場を建設した。
インドネシアでは自動車向けの樹脂製部品を生産していたが、操業率低下により、児玉化学の連結純資産が減少。16年3月期に債務超過に陥り、上場廃止猶予期間に入った。赤字のインドネシア子会社の株式を売却し、連結から外した。投資会社、アドバンテッジアドバイザーズを割当先とする新株予約権の発行による増資で自己資本を増強。17年3月期末に債務超過を解消し、上場猶予を解除された。
19年2月には三菱ケミカルグループから外れた。三菱ケミカルHDグは三菱ケミカル(旧三菱樹脂)を通じて、児玉化学を持ち分法適用会社にしていたが、出資比率を引き下げて、児玉化学を持ち分法適用会社から切り離した。20年2月14日、事業再生実務家協会に事業再生ADR手続きの利用を申請。同時に投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドが組成する投資事業組合との間でスポンサー支援契約を結んだ。
4月14日、債権者であるすべての金融機関(三菱UFJ銀行など9社)からの同意を得て、ADR手続きによる事業再生計画が成立した。事業再生の骨子は対象債権69億円のうち23億円を投資組合に1億円で債権譲渡。投資組合はこのうち20億円をデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)し、残る3億円を債権放棄する。投資組合を割当先とする10億円の第三者割当増資で資本を増強する。投資組合が49.8%を保有する筆頭株主になる。かつて20.6%を保有していた三菱ケミカルは、この間、売却を進めており、持ち株比率は2.8%に減少する。
児玉化学の20年3月期の決算は売上高99億円に対して最終損失6.7億円となり、5.9億円の債務超過に転落する見込み。投資組合による一連の金融支援策によって、6月末までに債務超過を解消する予定となっている。6月26日付で三菱ケミカル出身の斎木均社長が退任し、坪田順一氏が社長に就く。斎木社長が資本構成を変え、三菱ケミカルとの縁切りをしたといえる。
上場廃止の猶予期間入りした理由は時価総額10億円を下回ったため。10億円を回復するには、株価は263円以上が必要。現在は238円(4月24日終値)と低迷しており、新社長のもとで、いかに株価を引き上げることができるかだ。
時価総額10億円未満の東証2部の銘柄は14社に増えた
上場廃止基準(1部、2部)は時価総額10億円未満、債務超過、有価証券報告書の提出遅延、有価証券報告書の虚偽記載などとなっている。今回、上場廃止の猶予期間入りした9銘柄は時価総額の10億円未満である。
コロナ禍がもたらした世界的な株式市場の混乱を受け、日本市場でも株価が急落する銘柄が続出する異常事態となっている。4月24日現在、時価総額が10億円未満の銘柄は、東証1部にはないが、2部市場では14銘柄にのぼる。3月末の9銘柄よりさらに増えた。今後、時価総額を理由とする上場廃止予備軍が、さらに増えることになりそうだ。
(文=編集部)