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店員「指示で休めない」…なぜ東京五輪オフィシャルショップの営業は許されているのか?

文=編集部
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東京2020オフィシャルショップ公式ホームページ

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、多くの店舗が営業を自粛している。最近では、東京都などが休業要請に応じないで営業を続けるパチンコ店の店名を公表し、波紋を広げている。インターネット上で「とにかく外出するな」「食料品など生活必需品以外は買い出しにいくな」という意見が主流になる中、“人知れず”営業を続けているショップがある。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の「東京2020オフィシャルショップ」だ。東京五輪の延期が決定されほぼ来客も絶えて久しい。政府の緊急事態宣言が発令され、一部ショップは休業や営業時間を変更しているものの、東京都内の中核店などはこのゴールデンウィーク中も営業を続けている。ショップで働く店員たちは「なんで私、毎日、通勤して働いているんだろう」とぼやく。

「何日もお客が来ないので3密が保たれている」

 4月下旬、首都圏の「東京2020オフィシャルショップ」を複数訪ねた。ある店は大型商業施設の中にあった。普段は多くの人でにぎわう有名プチブランドの衣料品店や、高級宝飾店が並ぶ専門店街の一角だ。しかし営業している店はなく、各店の入り口には立ち入り禁止用のロープや網が設置されていた。フロア全体が空虚な雰囲気に包まれていた。

 そんな中、オフィシャルショップだけが煌々と明かりを灯して営業を続けていた。来店客は1人もいない。店に入ると商品棚にたくさんつまれたマスコットキャラクター「ミライトワ」や「ソメイティ」のぬいぐるみが出迎えてくれた。店内にはピンバッジ、文房具やTシャツなどが所せましと並ぶ。店員はいわゆるワンオペ状態のようだった。

 いくつかのショップで買い物をするのと同時に「この状況下でも、休めないんですか」と聞いた。ある女性店員は次のように語った。

「休めないんです。指示で……。ゴールデンウィークも営業しています。ぜひ、またお越しください」

 別の店の男性店員もぼやく。

「五輪の延期が決まってから2日くらいかな。2020のロゴが珍しくなるかもということで、何人かお客が来ました。でも、それ以来、何日もお客が来ないことも珍しくありません。このご時世ですし、五輪のマスコットキャラクターが生活必需品とは思えませんので、当然と言えば当然です。お客さんがいないので、幸か不幸か密集、密閉、密接は避けられていると思います。ただ、今でも電車に乗って通勤しなくちゃならないのが正直不安です」

「営業しないとライセンス契約料を支払えない」

 別のショップの男性店員は次のように嘆息する。

「僕は、組織委員会からショップの運営を委託された代理店に雇われています。だから、なぜショップが営業を続けているのかはよくわかりません。雇い主からは『グッズを一つでも二つでも売らないと、ライセンス契約料を払えなくなって会社がつぶれる。それに組織委からも店が営業していることが、多くの国民にとって最大の広告になると言われている。仕事も楽でしょう? よろしく頼みます』と言われています。

 休業したら僕たちの給料がどうなるかもわからないので、休業にならないでほしいと思う半面、朝から晩まで誰も来ない店に一人で立ち続けるのは精神的にキツイです。なんで働いているんだろうと自分でも思います」

 組織委によると4月23日現在、東京都内を中心に全国各地に展開するショップは89店舗。営業(時短営業を含む)を続けているのは45店舗という。店員の雇用に直結する問題でもあり、簡単に全店休業というわけにもいかないことはわかる。だが組織委は、3月7日に西日本初出店となる「東京2020オフィシャルショップ なんば店」、次いで同月13日に東北地方初出店となる「東京2020オフィシャルショップ 福島店」をオープンするなど、新型コロナウイルス感染症が社会問題化する中でも、新規出店を続けていた。果たして、その経営判断は正しかったのだろうか。また休業する店と営業する店の線引きはどのようになされているのか。

ショップ営業は「機運醸成を目的とした活動として捉えている」

 組織委広報局の担当者は次のように説明する。

「東京2020オフィシャルショップは、ライセンス契約を締結した販売事業者に運営を委託しております。そのため、販売事業者及び該当商業施設の新型コロナウイルス感染対策方針に従って営業時間の短縮・休業等のご判断をいただき、運営いただいております。

 2021年に開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて、これまで同様、大会と最も身近なエンゲージメントとなる商品をお届けするとともに、機運醸成を目的とした活動として捉えております。延期に伴う店舗への影響については、販売事業者さまとも緊密にご相談して参ります。従業員の皆さまの雇用維持につきましては、ライセンス契約などの理由から販売事業者さまのご判断の通りとさせていただいておりますので、回答を控えさせていただきます」

 この状況下にもかかわらず不安定な雇用と、精神的に楽ではない労働環境に置かれている店員たちのことが心配だ。

(文=編集部)

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