B氏とC氏はA氏に対し、将来的にはY社がC社を買収する予定であり、「万一支払が滞った場合には、Y社が支払を保障する」という条件を提示するとともに、B氏もC氏も個人で保証人となるから、この取引はA社にとってノーリスクである、と請け合った。
出資以降
A氏は当初、2,000万円を3年契約で出資する契約を結び、その後翌年までに1億円超まで積み増した。当面は毎月、契約通りの配当金を受け取ることができていて、14年末までに出資した総額の1億3000万円に対し、配当総額は7700万円までに達していた。
しかし15年に入り、B氏の様子がおかしくなってくる。これまでは自社で加工するための金地金購入を目的とする資金需要ということであったが、こんどは「パキスタンの王族が支配している鉱山開発に出資する」と言いだしたのだ。B氏は「パキスタンの大物が地元の銀行を買収し、そこに日本から三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、ヤマダ電機、森永乳業、セブン&アイ・ホールディングスなどが入り込もうとしている」「我々も金の採掘に乗り出す」と説明した。
15年2月、B氏からA氏宛に連絡が入る。遠方のオフィスまでわざわざ訪問したB氏はこう告げた。
「月末に清算するためのお金を用意できなくなったので、支払を3月まで待ってほしい。絶対に裏切らないから」
しかし、A氏はB氏の様子に不安を感じたため、翌日社員をB社事務所まで赴かせて、現金の預かり証などを確保してきた。出資に際して、A氏は振込ではなく現金で受け渡しをしており、書類なども取り交わしていない状態であったからだ。
同日夜、A氏は「これまでに取り交わした契約書を社員に受け取りに行かせるから」、とB氏に電話で伝えたが、B氏とはそれきり連絡がまったくつかなくなってしまったのだ。
翌日、山梨に向かったA氏はC氏を訪ねた。C氏は「お金は全部B氏が使った。私もB氏にお金を渡している。自分も被害者だ。Y社会長も何も知らない」と答えた。A氏は弁護士に相談したが、出資金については「もう戻ってこないですね」と言われ、暗澹たる気分となった。
突然の破産申請
その後、裁判を決意したA氏は、今回の出資話についていろいろと調査を始めた。確認したところ、A氏と同様に投資した人も複数おり、全員同じように「Y社が尻拭いする」という話を聞き、安心して出資を決断していたようだ。