ソフトバンクグループは株主総会前日の6月21日、副社長で次期社長候補だったニケシュ・アローラ氏の退任を発表し、株主ならずとも世間から唐突な感じを持たれた。
2014年、米グーグルに在職していたアローラ氏に孫正義社長がほれ込み、契約時のボーナスも含めて約165億円を支払い入社させ、さらに15年度も約80億円に上る巨額報酬が支払われ話題となった。
「2年間で240億円の社長後継者候補」の突然の退任ということで騒がれているが、私は孫社長の続投宣言という視点のほうを重視したい。株式市場も孫社長続投について好感を示し、総会の前週末6月17日の株価から、23日終値ベースで9.1パーセントも値を上げた。
総会前日の発表は問題ない
アローラ氏が退任するという発表が株主総会前日だったことを問題視する論調がある。つまり、総会での提案議題としては同氏の再任が盛り込まれており、総会本番でそれが覆されたので、事前に株主投票や委任状を提出していた株主は意思表示をする機会が奪われた、というのだ。
しかし、アローラ氏の退任が6月になり急遽決定されたということなので、上場企業としての適宜開示の原則のほうが優先されるべきだろう。そして何より、孫氏の社長続投という意思決定によるものなので、それが企業価値の増大に益するものかどうかという可能性によって評価されるべきだ。
58歳になる孫氏は、「(来年8月11日に迎える還暦の誕生日に)古くからの友人やソフトバンクの幹部を集めて僕の誕生日パーティーを開いて、そこでみんなを驚かせようと思っていた。『実は明日からニケシュが社長になります』とね」と株主総会で吐露した。しかし、人工知能(AI)が人類の知能の総和を超える「シンギュラリティ」の到来を前に「(経営への)妙な欲が出てきた」として、「情報革命」のチャンスが広がったことが引退撤回の真相だとしている。
株主総会には社外取締役も出席した。柳井正社外取締役(ファーストリテイリング社長)は「60歳にもなっていないのに引退なんて冗談じゃないぞと申し上げた」と述べ、続投を支持した。また永守重信社外取締役(日本電産社長)も「経営意欲は年齢ではない」と強調して、「最初から絶対に辞めないと思っていた。69歳になったらまた10年やるだろう。あまり信用しないほうが良い」と述べて、会場の笑いを誘った。