新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自治体の営業自粛要請などで、収入が半減した個人事業主を対象とする国の「持続化給付金」の電子申請が1日から始まった。問題は特設ページの使い勝手の悪さで、パソコンやスマホに不慣れな高齢者のみならず、申請希望者から不評の声が聞かれる。
持続化給付金は飲食店など営業自粛要請を受けて開店休業状態になった事業者が待ち望んでいた救済策で、最大100万円を支給するというもの。感染予防対策のため「電子申請が基本」としたため、申請初日の1日にはサーバーダウンと見られる接続不良が発生するなどしていた。さらに電子申請ページそのものの使い勝手の悪さもあるようだ。東京都内の30代の居酒屋経営者は肩を落として話す。
「とにかく、使い勝手が悪いです。まず証拠書類として確定申告書1枚、法人事業概況説明書2枚、対象月の売上台帳、通帳の写しを添付する必要があるのですが、この添付ファイルの容量がたったの10MBしかありません。しかもファイルはJPEG、PDF、PNGです。iOS標準のHEIFは対象外です。この段階で、ひと手間かかります。
さらに申請事項記入時のデータ保存の使い勝手が良くないです。そもそも一時保存するためのボタンがありません。『次へ』をクリックするたびに自動保存されるのですが、『次へ』をクリックしたときに結構な割合で『入力エラー』が出ます。入力エラーが出ると、これまでの記入事項は自動保存されていないという仕様です。何度も書き直しになりました。
しかも、申請を行った後に内容を取り消すことはできません。審査中の修正もできません 。公的な書類なので慎重に記入しなければならないのはわかりますが、役所で対面で提出する時と違い、不明点を窓口の職員に聞くこともできないので緊張します。最終的に申請まで2時間近くかかりました。
初日に申請してそろそろ2週間たちますが、いまだに入金はありません。入金予定日の通知はそもそもないようです。また書類に不備があった際は、向こうから通知がくるそうですが、コールセンターに聞いたら2週間くらいかかるそうです。これはお年寄りの経営者にはキツイのではないでしょうか」
不許可や不備の通知が、いつくるのかもわからない
Twitter上では申請に対する困惑の声が溢れている。
「持続化給付金の申請してるけど
これは
年寄りには難しい..」
「持続化給付金って給付された人はマイページの方に通知されたりするんですか? それとも自分で口座を確認するまで分からない感じ?」
「今度は持続化給付金のネット申請が出来ないと、高齢事業者が『オラァ、ネット申請なんか出来ねー!』と各商工会に相談が殺到して電話も繋がらない事態になってるらしい。これも想定出来たことだよねぇ」
「持続化給付金、不支給なら今週中には通知来るよね?
さすがに申請順通りにやっているなら給付された方の番号見れば初日組は審査終わってるだろうし、不備メールすら送って来ないし」
地方で高齢事業者が地元商工会に殺到
実際、地方では混乱が起こっているようだ。岐阜新聞インターネット版は13日、記事『持続化給付金、ネット申請のみ 高齢事業者「できん」相談殺到』で以下のように現状を伝えている。
「県商工会連合会によると、5月1日以降は県内の42商工会に1日当たり計100件程度の相談があり、給付金に関する問い合わせが増えている。担当者は『国のコールセンターがつながらず、各商工会で電話を受けることが多い』と話す。
金山町商工会(下呂市)は大型連休中の4~6日に休日相談窓口を設け、約50件の相談を受けた。『インターネットでの申請の仕方が分からない』といった内容も相次いでおり、担当者は『地方は70代以上の事業主が多く、融資を受けるくらいなら廃業を選ぶ人もいる。このままでは地方の街の明かりが消えてしまう』と危惧する」
経済産業省は電子申請が困難な事業者向けの「申請サポート会場」を今月末までに全国400カ所超を設置する方針だが、公式ホームページによると12日までに開設済みなのは4カ所のみ。関東経済産業局の関係者は「東京都内などを中心にサポート会場設営のための準備を進めていますが、自粛の影響で会場確保の手配が難航していることや人員不足もあり、管内全域の整備が完了するまでにはやはり今月末までは必要だと思います」と話す。
政府の迅速な対応が待たれる。
(文=編集部)