鈴木 20年くらい前、たくさんのキャンペーンガールが芸能界にデビューした時代がありました。転向して最初の1年くらいは知名度や話題性でなんとかなりますが、それから先は続きませんね。テレビ局のプロデューサーやディレクターはすぐに演技力を見抜いてしまいますから、二度と使ってもらえません。
ーー米倉さんや剛力さんがモデルから女優へ転身する際には、御社の中で演技の指導などもされたのですか?
鈴木 もちろんです。私どもはそういう育成システムを持っていますから。彼女たちはモデルの仕事をしながら、育成システムに参加し、演技の勉強などを続けてきました。モデルでも、演技力が必要とされるコマーシャルのオーディションは受けられますから。本人にとっても、勉強をやって損はありませんからね。
ーー現在活躍されているタレントの方々に共通している素質みたいなものは、何かありますか?
鈴木 一言で言えば、やはり負けず嫌いでしょうね。「やれません」「できません」という弱音を吐きませんよ。だから、壁を乗り越えてこられたのでしょうね。
例えば上戸彩の場合、「こういうオファーがあるけど、やれる?」と聞くと、最初は「えー」と言いますが、「でも、どうせまたやっちゃうんでしょ? いつもそうじゃん」とハッパをかけると、陰で努力し、必ず壁を越えていきます。
●芸能マネジャーに必要な条件
ーー芸能マネジャーというお仕事は、具体的にどのようなことをされるのでしょうか?
鈴木 まず、現場マネジャーというのは、タレントと一緒に行動して、現場で約束事がきちんと守られているかというようなことをチェックするマネジャーです。その上に、複数の現場マネジャーを束ねるチーフマネジャーがいて、スケジュール管理や営業をします。
現場マネジャーは、現場で仕事の内容を覚えていくことも大事ですが、現場に行ってテレビ局のプロデューサーやディレクターと顔見知りになり、人脈をつくることもまた大事なことです。我々は人脈がすべてですからね。プロデューサーの方々などと、気さくになんでも話ができるような間柄にならなければ、仕事はもらえません。
ーー御社の採用基準は、かなり厳しいとお聞きしたのですが。
鈴木 他社さんと同じだと思います。特別に高い基準を設定しているということはありません。ただ、人によって向き不向きはあります。向いていない人は向いていない。どれほど頭がよくてもダメです。どこの大学を卒業したかは、まったく関係ない。これはセンスの問題ですから。ディレクターセンス、プロデューサーセンスがあるように、マネジャーセンスというのもあります。
ーー優秀な芸能マネジャーになるために、必要なことはなんでしょうか?
鈴木 今の若い人は、ちょっとイヤになると、すぐに辞めますね。この道がダメなら違う道を行こうという感じで。我々の時代は、「この世界=芸能界でなんとか飯を食えるようになりたい」と一生懸命頑張りました。今でもプロ野球やJリーグを目指している人は、いつかはプロになりたいという夢を持って努力している。ですので、この業界、そしてこの仕事が好きということが第一です。
それから、人のために寝ずに仕事をしなければいけないこともあります。人が好きで、ある程度面倒見がよくないとダメでしょうね。