7月18日に約11時間にわたって放送された『2016FNSうたの夏まつり~海の日スペシャル~』(フジテレビ系)は、ゴールデン帯の19時から21時までの平均視聴率が10.9%(ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)、プライム帯を含めた22時から23時24分までが10.5%を記録した。最近は日本テレビやTBSでも長時間の音楽番組を放送しており、新鮮味にかける部分もあったためか、数字は伸びなかった。
事前の告知動画では、ADが椅子に横たわって寝ている姿が映し出され、「(セットの)ひとつの下書きをするだけで3時間半」「打合せ回数296回」「資料改訂回数41回」「1日にADが歩く距離は約20km(39,930歩)」と、いかに番組づくりが大変かを訴えていた。結果として、インターネット上では「ブラック企業」などと批判を浴びている。テレビ局関係者が話す。
「確かに良いものをつくるには、妥協のない姿勢が必要なのは間違いありません。ただ、告知動画で自慢するように流す意味がわからない。それを見て、番組を見ようとは誰も思わないでしょう」
大手テレビ局員は高給であり、かつてフジは就職したい企業ナンバーワンにも選ばれていたが、実情はどんなものなのか。番組制作会社関係者が話す。
「局員も大変でしょうけど、実際に苦労しているのは制作会社などの下請けですよ。椅子で寝るのはまだマシで、気付いたら床で寝ていたなんてこともザラ。今はだいぶ減りましたが、ディレクターがADを殴る蹴るは当たり前の世界ですから。それもこれも、局員からのプレッシャーが半端ないからです。これはフジに限った話ではないですよ。ネット上でなぜか評価の高いテレビ東京だって同じです」
局は発注だけしておいしい所取り
局員と制作会社社員のあいだには、大き過ぎる隔たりがある。
「局員の場合、もちろん最初はADもやるけど、数年たてばプロデューサーになることがほぼ保証されています。制作会社に長くいると、かつてADだった何歳も年下で経験の浅い局員がプロデューサーになり、上から目線でダメ出しされる。能力的に高ければ仕方ないけど、明らかに能力の低い局員に付くと悲惨です。
それでいて、制作会社の場合、30代半ばの10年選手になっても年収は300~400万円台なんて会社も珍しくない。フジ局員の半分以下のレベルです。実際、局員だけでつくっている番組なんてほぼ皆無にもかかわらず、局は発注だけしておいしい所だけ持っていく。苦労している現場への配慮はまったく感じられないですね。同じ番組をつくっていても、局員が良い身分なのは間違いないけど、制作会社はまさにブラック企業そのものですよ」(同)
制作会社への待遇を変えない限り、テレビ局の未来は暗い。
(文=編集部)