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西川立一「流通戦争最前線」

大量のブランド品が80%オフも…オフプライスストア人気拡大、ドンキやワールドも参入

文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー
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ラック・ラック・クリアランスマーケット

 今、「オフプライスストア」という新たなマーケットに注目が集まっている。事業に参入する企業が相次ぎ、昨年はレンタルCD・DVD・リユースのゲオ、アパレルのワールドが事業をスタート、今春はディスカントストアのドン・キホーテが新たに参入し、1号店をオープンした。

 オフプライスストアは、小売や卸しなどが抱える余剰品を買い取り、激安価格で販売する業態。「アウトレット」のさらなる廉価版ともいえ、70~80%オフといった商品もある圧倒的な安さが魅力で、衣料品やバッグなどの服飾雑貨、靴の取り扱いが中心のショップ。

 米国ではすでに市場規模が約8兆円と巨大だが、日本ではタカハシが草分け的存在で、2007年から多店舗化に取り組み、現在、東京、神奈川、埼玉で40店舗を展開しているのが目立つ程度。メーカーや卸しの余剰在庫を買い取り、平均150坪程度のスーパーのような売場で、半額以下で販売し、年商は70億円(19年8月期)。

 今まではごく限られた存在だったが、今回新たに大企業が参入したことで、がぜん注目が集まっており、今後市場が活性化することが見込まれている。衣料品の余剰在庫は15億着ともいわれ、企業にとっては収益を圧迫する要因ともなっており、オフプライスストアは大きなマーケットになる可能性を秘めている。

積極的なゲオグループ

 ディスカウントストア最大手のドン・キホーテは3月 24 日 、リニューアルオープンした「MEGAドン・キホーテUNY大口店」に、1号店の「オフプラ MEGA ドン・キホーテ UNY 大口店」を設け、多店舗化を進めていく計画だ。アパレルメーカーやブランド、小売店などが大量に抱えている余剰在庫や、廃棄・焼却などの方法で処分される予定の商品を同社が買い付けて再販売する。

 これに先立ち、ゲオグループは全国的なネットワークを持つゲオの強みと、リユース事業で培った運営ノウハウを活かして、昨春から事業を開始した。「Luck・Rack Clearance Market(ラック・ラック クリアランス マーケット)」は昨年4月、1号店「コーナン港北インター店」(横浜市)をオープンし、7月に「八尾店」(大阪府八尾市)、11月に「御経塚店」(石川県野々市市)、12月に「ビバモール本庄店」(埼玉県本庄市)、今年3月には埼玉県所沢市の「新所沢パルコ」に出店。現在5店舗を展開している。

 メーカーやブランドのオフプライスストアに対する理解不足で、当初は商品調達先の確保に苦労したが、現在、アパレルをメインにメーカー販社、卸しなど約150社を確保。専門店ブランド60%、百貨店ブランド20%、処分業者、その他各10%の割合で仕入れている。

 アパレルの有名ブランドや有力セレクトショップの商品をはじめ、「マーク ジェイコブス」「フルラ」「ヴィヴィアン・ウエストウッド」など正規代理店、並行輸入のインポートものも取り扱い、プーマ、アディダスなどのスポーツブランドも数多く、ハイブランドも数%程度ある。メインターゲットは30代半ばから50代までの女性。「宝探しのようなショッピング体験」をショップコンセプトに、さまざまなブランドを70~80%オフ、半額などで提供し、楽しんでショッピングをしてもらう。

 立地はブランドの既存店への影響に配慮し、都心ではなく郊外に限定。「八尾店」は単独の路面店、「御経塚店」はゲオのインショップ、「コーナン港北インター店」と「ビバモール本庄店」はホームセンターが運営する商業施設のテナント。今年3月に出店した「新所沢パルコ店」(埼玉県所沢市)は、初めて集客力の多い駅前の専門店ビルへの出店となり、オープン後の動向が注目される。

 店舗スケールは、コーナン港北インター店の427坪が最大で、次いでビバモール本庄店が350坪、そのほかも220坪前後とかなり広い。今後もNSC(近隣型ショッピングセンター)、CSC(コミュニティショッピングセンター)への店舗展開と並行して、低投資で行えるゲオ店内の出店も継続していく。

 さらに、出店機会を増やすため、RSC(広域型ショッピングセンター)のテナントを想定し、150坪タイプの開発も予定し、小商圏にも出店。大型店と小型店でドミナント化を図り、アウトレットモールでの展開も視野に入れている。

 取扱商品は多彩で、レディースを中心にメンズ、キッズの衣料品、靴、バッグ、アクセサリーなどの服飾品、スポーツやアウトドア、食器や寝具といったリビング雑貨も揃え、店舗により異なるが、2万5000~5万点以上の商品を展開している。衣料品の割合は70%で、内訳はレディース55%、メンズ35%、キッズ10%。

 これからも新業態の開発に取り組みながら、さまざまな施設に出店していき、露出度を高めて認知度アップをめざし、5年後に100店、10年後には300店に店舗網を広げたいと考えている。

「&Bridge(アンドブリッジ)」

 アパレル大手のワールドも昨年8月、ゴードン・ブラザーズ・ジャパンと合弁企業アンドブリッジを設立、9月に「&Bridge(アンドブリッジ)」の1号店を、埼玉県さいたま市の「にしおおみやファッションモール」に出店した。貴重な一点物も多く取り揃え、価値ある商品をお得感を感じながらショッピングできる店舗として、ファッション感度の高い層をターゲットに都市近郊の利便性の高い立地で提案する。

 お気に入りの一点を見つけるショッピングの楽しさを伝えるため、あえてブランド名の表記は行わず、ブランドミックスでレディース、メンズ、キッズ、ファッション雑貨、生活・キッチン雑貨、コスメ・フレグランス、ジュエリーまで、カテゴリーごとに商品を並べている。

 品揃えは、メーカー66社、およそ250ブランドの約1万2000アイテム。ワールドのブランドとゴードンの商品調達網から消化仕入れしたものがあり、1万円未満、1万円以上2万円未満、2万円以上の3つの価格帯で展開している。商品構成は、レディースが45%、メンズが15%、キッズが5%、ファッション雑貨が15%、生活・キッチン雑貨が15%、コスメ・フレグランスが3%、ジュエリーが2%となっている。

「西大宮店」はアウトレット業態「ネクストドア」からの業態変更だが、売上は60%増えて推移し、平均客単価は5500円と結果を出している。今後もオフプライスストア業態のオープン・プラットフォームとして店づくりを進化させ、首都圏で出店エリアを拡大しドミナント化をめざし、都市部近郊では150坪タイプ、郊外では300~400坪で商業施設に出店していく。

社会にとって必要不可欠な静脈ビジネス

 在庫を廃棄することなく再び商品として世の中に送り出すオフプライスストアは、社会にとっても必要不可欠な静脈ビジネス。ゲオクリアでは大きな市場に急成長した米国のようにはいかないと見ているが、手ごたえを感じており、在庫を処分したいメーカー、格安で売れる小売、安く商品が手に入る消費者と「三方良し」のビジネスだととらえている。

 ワールドでも、日本においてオフプライスストア業態はファッション経験豊富な世代を中心に潜在的なニーズが十分にあるものとらえており、このビジネスの可能性を感じている。

 アパレル市場において低迷が長期化し、さらに新型コロナウイルスによる追い打ちで深刻な打撃を受けているなかで、オフプライスストアの必要性はますます高まり、さらに参入する企業も予想され、市場が急拡大する可能性も高いと見込まれる。

(文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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