三陽商会の苦戦が鮮明だ。同社が10月30日に発表した2019年1~9月期連結最終損益は19億円の赤字(前年同期は15億円の黒字)だった。同日、20年2月期通期(14カ月の変則決算)の連結業績の修正も発表したが、最終損益は従来予想の7億円の黒字から15億円の赤字(前の期は8億1900万円の赤字)に引き下げ、一転して4期連続の最終赤字となる。
さらに同日、岩田功社長の辞任も発表した。岩田氏は20年1月1日付で代表権のない取締役に退き、中山雅之取締役兼常務執行役員が社長に昇格する。
同社は20年2月期通期の業績修正の理由として、主力の百貨店向けの販売が苦戦したことを挙げた。売上高は従来予想の725億円から680億円(前の期は590億円)に引き下げた。営業損益は6 億円の黒字から18億円の赤字(前の期は21億円の赤字)に修正した。
同社は7月に19年1~6月期のチャネル別売上高(単体)を発表しているが、百貨店向け売上高は184億円で、前年同期から3.2%減った。同売上高は全体に占める割合が64%にも上るが、その不振が大きく響いている。
百貨店は厳しい状況に置かれている。日本百貨店協会によると、18年の全国百貨店売上高は5兆8870億円で、10年前の08年からは20%減った。なかでも3割(18年実績)を占める衣料品売上高の落ち込みが大きく、18年には08年比35%減の1兆7725億円まで減少した。百貨店に依存する三陽商会は、百貨店の動向に左右されやすく、その苦境の影響をもろに受けている。
もっとも、三陽商会の不振は、稼ぎ頭だった英高級ブランドのバーバリーを失った影響も大きい。1965年に輸入販売を開始し、70年に日本で企画から販売までできるライセンス契約を結んだが、英バーバリーの戦略転換により、15年に契約が打ち切られた。
バーバリーを失ったことで、三陽商会の業績は急激に悪化した。16年12月期の連結売上高は前期比30.6%減の676億円と激減。営業損益は84億円の赤字(前の期は65億円の黒字)、最終損益は113億円の赤字(同25億円の黒字)と、それぞれ大幅赤字に陥った。
同社はバーバリーとの契約終了後、「マッキントッシュ ロンドン」などのブランドを新たな収益源となるよう育ててきた。だが、ラインアップは百貨店向け偏重に変わりはなく、百貨店の不振と歩調を合わせるかのように、これらブランドの販売は伸び悩んでいる。それが影響し、三陽商会は18年12月期まで4期連続の減収、3期連続の営業赤字・最終赤字となるなど苦戦が続いている。
オンワード、レナウンも苦境
三陽商会に限らず、百貨店向けアパレルを中心に据える企業は、どこも苦戦を強いられている。最近では、オンワードホールディングス(HD)が大量閉店の決断を余儀なくされた。グループ全体で国内外に約3000ある店舗の2割程度に相当する約600カ所を閉鎖すると報じられている。
厳しい状況を受けてオンワードHDは、20年2月期の業績予想の下方修正も発表。不採算店の閉鎖など構造改革で特別損失を計上するとし、連結最終損益は240億円の赤字(前の期は49億円の黒字)に引き下げた。従来は55億円の黒字を見込んでいたが、一転して最終赤字となる。
オンワードHDは、「23区」「組曲」「五大陸」といった百貨店向けアパレルを主に販売する。だが、三陽商会と同様に販売は苦戦を強いられている。
レナウンも厳しい状況だ。19年3~8月期の連結最終損益は18億円の赤字(前年同期は23億円の赤字)だった。同社も百貨店向けの不振が続いている。