経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が、いよいよ崖っぷちに追い込まれた。中国の投資ファンドから支援を見送ると通告され、再建案は白紙に戻った。株式市場では、JDI解体が公然と語られている。新しい再建案がまとまるのか、ここ1カ月が生死を分ける正念場だ。
9月26日、金融支援の契約を結んでいた中国の大手投資会社、ハーベスト(嘉実基金管理)グループから、800億円の金融支援の枠組みを離脱するとの通知を受けたことが混乱の幕明けとなった。ハーベストは香港投資ファンドのオアシス・マネジメントとともに、JDIへの出資を目的につくった企業連合SUWAインベストメントホールディングスを通じて800億円を出資する予定だった。
中国・香港の企業連合による金融支援の内訳は、ハーベストが633億円、オアシスが161億~191億円となっている。ハーベストの出資分のうち1億ドル(107億円)をJDIの主要顧客のアップルが負担するというスキームである。JDIは企業連合から10月末までに最大600億円、来年8月末までに200億から300億円を追加で調達する段取りだった。
ハーベストは離脱の理由として、ガバナンス(企業統治)に対する考え方について、JDIとSUWAとの間で「重要な意見の不一致が生じた」ためとした。ハーベストはJDIに取締役の過半数を送り込み、経営を掌握する意向を示したとされている。
再建策は練り直し
JDIが9月27日、都内で開いた臨時株主総会は異例の展開となった。800億円の金融支援を受け入れるための新株発行などの議案などを可決した。26日に出資を見送ることが明らかになったハーベストグループとの「交渉を続ける」ことを前提として、議案を可決するという奇妙な株主総会だった。
可決した4つの議案のうち、1~3号議案は金融支援に絡むもの。800億円相当の新株発行などの承認を得たものの「資金の出し手は見当たらない」状況だ。4号議案は新社長を含む役員選任案で、経営者不在を避けるため、JDIは臨時総会の開催を強行するほかはなかった。すでに事前に議決権を行使していた大株主もあったので、株主総会をやらざるを得なかったという。
経営不振の責任を取るかたちで月崎義幸前社長は引責辞任。菊岡稔・常務執行役員が新社長に就いた。菊岡氏は旧日本興業銀行出身で17年にJDIに送りこまれていた。「なぜ二転三転するようなところに支援を頼まないといけないのか。屈辱だ」。株主から怒号が飛んだ。