このように「インサイダー化」を常に心がけて、現地と同じ目線で考えるようにすると、かなり答えが見通せるようになってきます。
その過程で大事なのが、体を使うこと。今はスマートフォンで検索すればすぐに答えがわかった感じがしますよね。もうわかったからと、それ以上の関心が持てなくなる。検索イコール答えになっている感じがします。
現地で体を使うと、理解するまでのプロセスでいろんなことを自分で考えます。続けることでこの場合はこうすればいいというのもわかってくる。身についてくるわけです。体を動かし続けていれば、必ずなんらかの成果を得ることができます。
「トレンドをつかむ力」が成否を左右する
–新興国では、事業をするうえで十分なデータがなく、極端な話をすれば、明日法律が変わってしまう可能性もあると思います。どうやって将来性を判断するのですか?
岡部 物事を予測するときに重要なのは、TCIという3つの要素です。Tはトレンド(Trend)、Cはサイクル(Cycle)、Iはイレギュラー(Irregular)。トレンドは10年、20年単位で、上がっているのか、下がっているのかをみます。サイクルは循環、イレギュラーはリーマンショックなどの社会的なショックのことです。
日本、アメリカ、ヨーロッパの国々は成熟しているので、トレンドは右肩上がりではなく、成長が止まっています。
一方、新興国はトレンドが上に向いています。人口も増えるし、経済規模も上がってくる。いろんな変化があるけれども、どの変化も成長のプロセスです。
新興国市場につきものの景気の善し悪しを机の上だけで考えていたら、上がっている時には「もっとやれ」といい、下がっているときには「やめろ」という判断になってしまいます。しかし、景気は常に上下しながら成長していくのですから、その時その時の評価ではなく、時系列で判断する能力が必要なんです。良いとき、悪いときがあっても、トレンドは見失わない。そういう人材や組織じゃないと、新興国で事業をするときには失敗します。
ところがトレンドはなかなか見えません。私が会社に入った1970年代は、日米欧が先進国で、東欧と中南米を中進国、アジア・アフリカを後進国と呼んでいました。アジアが現在のようにトレンドを押し上げるなんて、当時は誰も言っていませんでした。