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日銀の「際限なき」金融緩和、金融機関の経営と日本経済を圧迫…「死活問題」に

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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マイナス金利深掘りの可能性

 マイナス金利の深掘りに関しては、エコノミストらの間でも意見が分かれている。多くの市場関係者の本音は、「できることなら、マイナス金利の引き下げはやめてほしい」ということだろう。マイナス金利の深掘りが進むと、金融機関、年金基金などはさらなる運用難に直面する。それは彼らにとって、死活問題にも当たる重要なポイントだ。

 一方、日銀の黒田総裁は7月の決定会合以降も一貫して、「マイナス金利深掘りの余地が十分ある」「ほかにも金融政策にできることがいくらでもある」との考えを強弁してきた。そうした一辺倒の態度に対して、最近では専門家の間で「市場との適切なコミュニケーションができない」との批判の声が高まっている。

 ただ、黒田総裁の基本的なスタンスが短期間に変化することは考えにくい。恐らく、9月の総括的検証の内容は、「マイナス金利政策には物価上昇に相応の効果がある。それでも物価が上昇しないのは、原油価格の下落など海外要因の影響が大きい。さらに金融緩和を進め、デフレ脱却を目指す」との内容になり、決定会合ではなんらかの金融緩和措置が発表される可能性が高い。

 マイナス金利の深掘りが実施される場合には、金融機関からかなり厳しい批判が出るはずだ。日銀は、その批判を覚悟しなければならない。その意味では、さらなる金融緩和が進むことは、日銀が金融政策正常化への出口を一段と困難にすると考えるべきだ。

際限なき金融緩和のリスク

 日銀は、なんとしてでも金融緩和の効果を加速したいと考えているはずだ。特に、金融政策を通して間接的に円安圧力を高めたいとの考えは根強いはずだ。アベノミクスは金融政策を過度に重視し、強力な金融緩和を通して円安圧力を高め、企業業績のかさ上げと株価上昇、景気への期待を演出した。

 しかし、冷静に世界経済を判断すると、基本的には円高が進みやすくなっている。米国政府の本音は、ドル高よりも緩やかなドル安を欲しているはずだ。ドル高が米国の大手企業の業績を圧迫し、景気の足かせになってきたからだ。為替レートに影響を与えやすい実質金利(名目金利-物価上昇率)を見ると、デフレ圧力が残る日本の実質金利は米国よりも高い。金融緩和にもかかわらず需要が高まっていないことは確かだ。そして、日本の経常収支の黒字も増えている。需給面からも円は買われやすい。

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