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また、外国人観光客に対しては、彼らの趣味嗜好やアレルギー、信条または宗教上の禁忌等々のため、「選択肢」を設けることが必須の条件となる。日本料理は選択肢を排除した「お決まり」が主流といえるが、それは恐ろしく趣味嗜好や体質、文化的背景の似通った日本人相手だからこそ成立しうるフォーマットだ。
「イスラム教徒はハラルフード」という認知は高まったが、侮れないのがベジタリアン。故スティーブ・ジョブズをはじめ、IT系の超富裕層はベジタリアンが多いといわれ、ハリウッドスターや有名ミュージシャンにもベジタリアンは少なくない。そして近年、彼らなくしてIT産業は成り立たないといわれるインド人も、かなりの割合でベジタリアン。要は富裕層をゲットしたければベジタリアン対応は欠かせないのである。
アニメは「諸刃の刃」
最後に首相のマリオ・コスプレに関していえば、クールジャパンの一環として戦略的に位置づけられている「アニメ」は「諸刃の刃」であるとつけ加えておきたい。
今や世界中の書店にアニメコーナーが設けられ、日本の「MANGA」がずらりと並べられているが、その主たる顧客層は「オタク」である。彼らのライフスタイルやファッションは日本人オタクのそれと変わらず、アメリカでも一部ではオタクを揶揄する人も存在する。
米人気番組『サタデーナイトライブ』では、日本のアニメを偏愛するオタクのコメディがシリーズ化され、キティちゃんのぬいぐるみを体中にぶらさげた、セーラー服姿のアメリカ人オタクが奇態を演じていた。つまり、日本のアニメに対して眉をひそめる層も確実にいるわけで、アニメに依存しすぎたイメージ戦略は危ういともいえる。
とはいえ、安倍首相のパフォーマンスと東京紹介ムービーは、旧来の堅苦しい日本PRとは一線を画し、アニメの取り入れ方のバランス、センスにも秀でていたと思う。
あと4年。進境著しい日本人選手同様、日本やその食のPRセンスもますます進化していくに違いない。カルチャーギャップという落とし穴にさえ気をつければ、商機は十分だ。
(文=横川潤/文教大学准教授、食評論家)
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