8月21日、リオデジャネイロ五輪閉会式において和服姿の小池百合子・東京都知事が五輪旗を引き継ぎ、日本人選手のメダル獲得ラッシュに沸いた17日間の幕を閉じた。
閉会式では、次回開催地の東京を説明するムービーが流され、北島康介や高橋尚子といったアスリートに混じってドラえもんやキャプテン翼が映し出された後、安倍晋三首相がまさかのスーパーマリオ・コスプレで競技場中央に登場。観衆の大喝采を浴びた。
メダルラッシュという順風も受け、この演出はなかなかの成功だったと思われる。4年後に向けておのずと東京、日本への注目度も高まり、すでに史上空前の伸びを示している訪日外国人数も、右肩上がりで増えていくに違いない。観光庁「訪日外国人消費動向調査(2014)」でも、「日本食を食べること」が「訪日前に期待していたこと」上位10項目の堂々第1位(76.2%)で、第2位の「ショッピング(56.6%)」を引き離している。
こうした流れを受けて、フードサービス各社でも外国語表記やハラル対応メニューの導入など、さまざまな試みがなされ始めている。インバウンドがきわめて有望なマーケットなのは疑いないが、そこには、結構厄介なカルチャーギャップが立ちはだかっている。
ベジタリアンを侮るなかれ
日本食を食べることが日本を訪ねる大きな楽しみ、という回答に嘘偽りはないだろうが、西洋人の舌や胃袋は、毎食毎食、日本食が食べられるようにはできていない。西洋人を接待した経験のある方ならご存じと思うが、日本食びいきを自認する方でさえ、メインディッシュにステーキが出されると相好を崩し、恐らくはその日一番の笑顔を見せる。
米ニューヨークの人気日本食レストラン「NINJA」は、日本の食や文化に触れたいアメリカ人客が目ざしてくる店(のはず)だが、いっとき経営難に陥り、破れかぶれで(?)ワンポンドステーキを投入したところ、見事に息を吹き返したというエピソードもある。
それゆえ、日本旅館だから日本食を出していれば済む話ではない。特に日本人の間でさえ評判の芳しくない「旅館の朝食」は、見直しの必要があるだろう。湯布院の名旅館「玉の湯」は、夕食で供される豊後牛のステーキで名高いが、実は洋朝食がお目当てという常連も多い。インバウンドブームのはるか前から、巧まずして外国人対応にも優れていたわけだ。