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高橋暁子「ITなんかに負けない」

「会社行きたい」「効率下がった」…社員8割以上がテレワークの企業、3割台にとどまる

文=高橋暁子/ITジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルス感染拡大防止を目的として緊急事態宣言が発令されて以来、テレワーク導入企業が目立ってきた。テレワークとは時間や場所にとらわれない働き方のことだ。IT機器を駆使して在宅勤務に励んだという方も多いだろう。注目のテレワークの導入実態やメリット、デメリットを見ていきたい。

 多くの企業がテレワークを導入しているようだが、実際はどうなのだろうか。経団連の「緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策 各社の対応に関するフォローアップ調査」(2020年4月)によると、緊急事態宣言発令により97.8%の企業がテレワークに取り組んだという。

 ただしテレワークを実施している従業員の割合は、金融、電力、医薬や生活必需品サービスなどの事業を除き、「従業員の8割以上がテレワークを実施している」という回答は36.1%、7割以上8割未満が16.3%、7割以上とした企業は52.4%にとどまるなど限定的だった。

 また、freeeのテレワークに関するアンケート調査(2020年4月)によると、「テレワーク中でも出社が必要となる理由」は、「取引先から送られてくる書類の確認・整理作業」が38.3%と最多に。その他、「請求書など取引先関係の書類の郵送業務」が22.5%、「契約書の押印作業」が22.2%などと、紙やハンコのために出社しなければいけないのが実態だった。

 実際、「ハンコを押すためだけに出社してきた」という自虐混じりの投稿を何度もSNS上で見かけている。現在総務省は、文書が改ざんされていないと証明する「タイムスタンプ」の事業者認定の運用開始を当初の2021年度から20年内に早めると発表しており、今後の改善が期待できそうだ。

通勤がなく、家族の時間も増える

 テレワークをしてみて、皆さんはいかがだったろうか。メリットを感じたという意見は多い。ある30代男性は、「何よりもよかったのは通勤がなくなったこと。今までのストレスの大部分は通勤だったのかな」という。満員電車で通勤していた多くの人がテレワークによってストレスが減っただろうし、通勤に使っていた時間を仕事に活用できるようになったのも好評だった。

「自宅が好きなので、ベランダで仕事をしたり、気が乗らないときは散歩をしたりもできて、自分には合っていた」という人もいる。「快適に仕事ができるよう、良い椅子や機器も揃えたので、これからも自宅で仕事がしたい」。自宅の写真を見せてもらったが、まるで基地のように快適に作り込まれていた。

 小学校低学年の子どもを持つ40代男性は、「子どもに仕事をしている姿を見せられた」という。「どんな仕事をしているかあまりよくわかっていなかったみたいで、電話の様子を聞いていて、『パパ、すごいね』と言われた」。子どもの宿題を見たり、遊んだりする機会も増えて、以前より家族が仲良くなったそうだ。

運動不足、集中できないなどの不満も

 しかし、そんなテレワークにも悩みはある。HANABISHIの新型コロナ実態調査(2020年4月)によると、テレワークをしてみての悩みや不満は少なくない。

 最多は「運動不足になる」(40.29%)。続いて「コミュニケーションがとりづらい」(36%)、「仕事に集中できない」(35.14%)、「仕事の効率が悪い」(30.57%)、「気分転換ができない」(27.71%)、「生活のリズムや体調の管理が難しい」(26.57%)、「ストレスがたまる」(25.71%)などとなっている。

 テレワークで通勤時間は減るが、仕事とプライベートの境目がないため、労働時間は伸びる傾向にある。ヒアリングしたところ、「だらだらといつまでも仕事をしてしまう。結局、普段より仕事をしているのでは」という人が多かった。通勤がなくなったことで運動不足となり、数キロ太ったという話は多数耳にしている。

「メリハリがなくなって集中力や効率が下がったし、気分転換もできなくなった。最初は通勤がなくなって喜んでいたけれど、人と話す機会がまったくなくなり、今はまた会社に行きたくなっている」という人がいた。「会社の設備はやはりよかった。家で仕事をしていると腰が痛くなる」。

 また、ワークライフバランスが改善されて子どもといる時間は増えるが、食事の支度や子どもの世話で仕事が中断されたり、集中できないことは多いようだ。特に保育園まで休園しているため、低年齢の子どもを持つ保護者は、労働効率が著しく下がったという。

 会社がテレワーク用の機器を用意してくれてありがたかったという声も多かった。「働き方改革推進支援助成金」があったので、活用した企業も多かったようだ。一方、情報漏えいなどセキュリティリスクが高まるのが怖いとか、電気代がかかるようになったなどの声も聞かれた。

 ZoomやTeamsなどを使ったオンライン会議がメインとなったところは多い。移動しなくて済むのが便利な一方で、さまざまな声が聞かれる。「上司のお子さんが会議に参加してきて和んだ」「生活音が丸聞こえで恥ずかしかった」「散らかっていて背景に困った」「子どももオンライン授業なので時間が重なると困った」などの声を多く聞いている。

 緊急事態宣言は、ECショップでの通販や、テレワークがなければ成り立たなかった。ITは完璧ではないが、活用次第で生活や仕事は便利になっていく。今後も、コロナ禍によって、オンライン化やテレワーク移行が進むことは間違いないだろう。

(文=高橋暁子/ITジャーナリスト)

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

高橋暁子/ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授

書籍、雑誌、Webメディアなどの記 事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。 SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などが専門。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎) など著作多数。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。令和 三年度教育出版中学国語教科書にコラム掲載中。


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