10月26日付当サイト記事『朝日新聞、4年間で発行部数105万減の衝撃…新聞業界、存亡の危機突入へ』では、新聞の発行部数の減少に歯止めがかからない実態とともに、「残紙」をめぐる新聞社と新聞販売店のビジネスモデルを紹介した。今回は、その残紙の実態について、具体例を取り上げながらより詳細を紹介していく。
残紙とは、新聞販売店が新聞社から仕入れる部数と、その販売店の実際の販売部数の差を指す。たとえば新聞の購読者が2000人しかいない販売店が3000部を仕入れれば、差異の1000部が残紙ということになる。ちなみに、この残紙のなかには、新聞の配達作業の際に雨などで破損する部数を考慮した「予備紙」も若干数含まれる。
新聞販売店に大量の新聞が余り、定期的に古紙回収業者のトラックで回収されていることは、新聞業界の内部では広く知られている。
ちなみに残紙は、新聞社に大きなメリットをもたらす。第一に、残紙により販売収入を増やすことができる。第二に、残紙によりABC部数が増えるので、紙面広告の媒体価値が高まる。紙面広告の価格は、ABC部数に準じて設定するという基本原則があるからだ。特に公共広告はその傾向が強い。
この残紙のなかには、新聞社が販売店に必要以上の部数の仕入れを押し付ける「押し紙」も存在するとして、以前より批判する声も存在するが、新聞社は一様に否定している。
押し紙の存在について、当サイトの取材に対し朝日新聞社は、次のように回答している。
「『押し紙』とは、新聞社が新聞販売業者に対して正当かつ合理的な理由がないのに、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給したり、新聞社が指示する部数を販売業者に注文させたりする行為を指します。弊社はこうした行為をしておらず、従前より、押し紙はありません」
また、毎日新聞社も当サイトの取材に対し、次のように回答している。
「いずれも事実ではありません」
ちなみに朝日は今年3月、公正取引委員会より「押し紙問題で注意を受けた」と一部で報じられているが、朝日に事実を問い合わせたところ、次のような回答が寄せられた。
「弊社は本年3月、公正取引委員会から口頭で注意を受けました。弊社のある社員が数年前、販売所側から部数を減らしたいと相談や申し入れがなされた際に再考を促し、最終的には販売所長の注文通りに部数を減らして取引を継続することになりましたが、途中のやりとりに関して営業活動としてはやや行き過ぎた言動があったなどとする指摘でした。