独占禁止法上の注意とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったものの違反につながるおそれのある行為がみられた場合に未然に防止を図る観点から出されるものとされています。弊社として今回指摘のケースは押し紙にあたらないと考えておりますが、注意については真摯に受け止めております」
残紙の存在を裏付ける資料
残紙の存在を裏付ける資料としては、05年に外部に流出し一部で話題となった、ある大手新聞社の内部資料が有名である。この資料によると、02年10月の段階で全国の新聞販売店に搬入されていた同紙の部数は、約395万部だった。これに対して新聞購読者に発行された購読料の領収書枚数は約251万枚だった。差異にあたる約144万部分の領収書は発行されておらず、この部数が残紙に相当すると考え得る。発行される同紙の約36%が残紙だった計算になる。
また、別の大手新聞社の内部調査報告書によると、14年度のセット(朝・夕刊)版の平均発証率(一販売店の実際の売上高が、当該販売店の新聞社からの仕入金額合計に占める割合)は71.0%だった。また、統合(朝刊だけ)版は75.4%だった。つまり、販売店が仕入れる新聞の25~30%程度が残紙だったことになる。
残紙率70%の販売店も
このほかにも、次のような事例がある。
07年6月、ある大手紙の蛍池販売所と豊中販売所を経営していたB氏は、残紙の負担に耐え切れずに廃業した。引き継ぎの際にB氏と同新聞社の担当員間で交わされた覚え書きによると、搬入部数は両店の総計で4100部だった。これに対して、購読料の集金が可能な発証部数は、1246部だった。残紙率は実に約70%に上る。
また、筆者の手元に15年8月7日付のある大手紙の「増減報告」と題する書面がある。これは千葉県のある販売店から入手したもので、同日に朝刊の搬入部数が変わったことを示している。それによると、この日に1100部を減紙した。その結果、搬入部数は473部になった。つまり、それ以前の搬入部数は「1100部+473部=1573部」だったのだ。1573部から一気に473部に搬入部数が減ったわけだから、差異の1100部が残紙だったことになる。残紙率にすると約70%である。