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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

ファーウェイがスマホの世界シェア1位になる意味…国内市場でしか通用しない日本企業との差

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
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「Getty Images」より

 中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)がスマートフォンの国際市場(2020年4~6月)でシェアトップになりそうだと、7月7日付日本経済新聞で報じられた。

 そもそもスマートフォンの国際市場で長きにわたり首位の座を維持してきたのは、どのメーカーだろうか。学生にこの質問をすると、ほぼ全員から「アップル」という答えが返ってくる。

 確かに日本市場においては2012年以降、アップルが首位となっている。2019年の日本のスマートフォン市場は、アップル46.2%、シャープ13.6%、サムスン8.0%、富士通7.8%、ソニー7.4%という状況であり、アップルの強さが際立っている(IDC Japan)。

 ちなみに、筆者が担当している大学1年生を対象とした18人のゼミのうち、アップルユーザーは17人で、若年層におけるアップルの普及率は日本全体の平均を大きく上回っていることだろう。

 一方、世界のスマートフォン市場においては過去10年にわたり、サムスンが強い影響力を保持してきた。2019年の国際市場では、サムスン20%、ファーウェイ16%、アップル13%、シャオミ8%、オッポ8%、ビボ8%という状況である(Counterpoint Research)。アップルは、日本では圧倒的な存在ではあるものの、国際市場においては1割程度にすぎない状況である。

 直近の2020年4~6月の国際市場では、先に述べた通りファーウェイがサムスンを抜いて首位に立つ可能性が高いとのことである。その要因として、サムスンが新型コロナウイルスの影響により欧米を中心に大きく売り上げを落とした一方、早期に経済が再開した中国を主たる市場とするファーウェイの売り上げは微減で済んだことが挙げられている。

 こうした要因を見ると、サムスンの復活はそれほど難しくないように思われるが、果たしてそうだろうか。

携帯電話の国際市場シェアの推移

 歴史をさかのぼり、1985年の携帯電話の国際市場を見ると、1位はアメリカのモトローラだったが、2位:NEC、3位:沖電気、4位:ノキア(フィンランド)、5位:パナソニックと、トップ5のうち3社を日本企業が占め、日本企業の国際シェアは概ね5割程度に達していた。しかし、その後、徐々に衰退し、2000年代に入り国際市場において強い影響力を示せなくなった。日本企業に代わってサムスンやLGなど、韓国のエレクトロニクス・メーカーが台頭してきたのである。

 こうした欧米企業→日本企業→韓国企業といった流れは携帯電話に限らず、テレビなど、多くのエレクトロニクス製品で確認できる。

 このような視点から、今一度、2019年のスマートフォンの国際市場を見てみると、サムスン(韓国)20%、ファーウェイ16%(中国)、アップル(アメリカ)13%、シャオミ8%(中国)、オッポ(中国)8%、ビボ(中国)8%と、中国メーカーが台頭してきていることがわかる。

 また、2019年のテレビの国際市場においても、サムスン(韓国)19.8%、LG(韓国)12.2%、TCL(中国)9.2%、ハイセンス(中国)7.8%、シャオミ(中国)5.8%と中国メーカーの影響力が高まってきている(IHS Markit)。

 こうした状況は、韓国企業→中国企業という新たな流れが始まりつつあることを示しているのではないだろうか。

 つまり、短期的にはスマートフォンの国際市場においてサムスンが首位に返り咲くかもしれないが、長期的に捉えるとファーウェイを中心とした中国企業がますます影響力を強めてくることだろう。こうした傾向はスマートフォンに限定されず、テレビやPCなど、エレクトロニクス製品全体でますます顕著になってくると考えられる。

 米ドナルド・トランプ政権の、ファーウェイを中心とする中国企業に対する警戒感は、情報漏洩に加え、高まる国際競争力を危惧してという側面も否定できないのではないか。

 一方、日本のエレクトロニクス・メーカーは今後、どうすればよいのだろうか。たとえば、洗濯機、掃除機、炊飯器などにおいて、高い機能的価値を付加することにより、高価格での販売に成功している事例も見受けられる。しかしながら、こうした製品は日本市場でしか通用せず、国際市場において強い影響力を保持している日本メーカーは見受けられない。

 かつて日本市場に特化し、高機能・高価格化により国際競争力を失ってしまった日本の携帯電話が“ガラパゴス携帯”と呼ばれたが、同様に“ガラパゴス家電”とも呼べる状況に陥ってしまっていると考えられる。

 もちろん、ニッチ市場を対象として、売り上げは小さいながらも高い利益率を獲得するという戦略もあるが、そうした場合、通常、企業規模の拡大は見込めない。

 日本企業の細やかなモノづくり力には感心するものの、高い国際競争力の獲得に向け、どこで、どのように戦うのか。そのために必要なイノベーションとは何か。大きなビジョンが強く求められているように思われる。

(文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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