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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

専門知識の終焉…プロ囲碁棋士に勝った人工知能(AI)、開発チームに囲碁プロ級おらず

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

 この分類に基づいてAIは、無名のシンガーソングライターのハイディ・メリルさんがネットに投稿した楽曲がヒットすることを予測した。それまで、ニューヨークのバーなどを中心に活動していたメリルさんは、プロの音楽プロデュサーのもと、メジャーデビューを果たし、さらには世界中のテレビ番組に出演し、ネットでのダウンロードは2500万回を超えているという。

 音楽業界ではこうした動きが広がっており、アーティストの90%は予測システムによって発見されている。45年には、ヒット曲そのものを人工知能がつくる時代になるかもしれないそうだ。

どうやってIoTで稼ぐか?

 
 未来を予測するには、ビッグデータを集め、処理(計算)し、仮説を立ててデータ間の相関関係を見いだすことが必要だ。ここで「IoTとは何か」を考えてみると、「人を介さずにビッグデータを収集するための一手段」といえるかもしれない。「スマホの次」として話題になっているメガネ型や時計型のウエアラブル端末なども、センサーの一部と見なすことができる。

 しかし、未来予測を行うためには、年間出荷数が十数億台のスマホやウエアラブル端末だけでは足りない。シスコシステムズのいう「20年に500億台」でも十分ではない。

 そこで米国では、産学連携で毎年1兆個のセンサーを活用する「Trillion Sensors Universe」を実現しようとしている。1兆個のセンサーで、医療・ヘルスケア、流通・物流、農業、社会インフラなどを覆い、そこから得られるビッグデータを未来予測に活用するのである(図1)。

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 この動きが加速すれば、45年にはなんと250兆個のセンサーからビッグデータが集められるという。このような規模のビッグデータにおいては、「仮説を立ててデータ間の相関関係を導き出す」ことも最早、人間には不可能であり、人工知能の独壇場となる。その結果、「風が吹けば桶屋が儲かる」といった、一見すると可能性が低そうな因果関係を発見することも簡単にできるようになるだろう。

 ではどうすればIoTで稼ぐことができるのか? コンピュータも人工知能も、「桶屋が儲かるにはどうしたらよいか?」という問題を設定することはできない。つまり、IoTで稼ぐための第1条件は、AIに解決させたい問題、つまり「何で儲けたいか」という問題を明確にすることである。シスコシステムズがいう「IoTで7兆650億ドルの市場」は、こうして誕生すると考えられる。そんな時代は、もう、すぐそこまできている。

 このようにIoTによる未来予測には、AIが使われる。では、そのAIの本質とは何か?

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