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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

専門知識の終焉…プロ囲碁棋士に勝った人工知能(AI)、開発チームに囲碁プロ級おらず

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

16年はAIがブーム

 
 16年、ブームはIoTからAIへと移り変わった。私が購読している日本経済新聞では、紙面と電子版の両方で「AI」の文字を見ない日はない。EY総合研究所は、AI関連の国内市場は30年に86兆9629億円と、15年の23倍に拡大すると予測している(15年9月15日)。政府の産業競争力会議は、安倍晋三首相が明言した国内総生産(GDP)600兆円達成に向けて、ロボットやAIなどで30兆円の市場を生み出すという目標を掲げ た(4月19日)。そして、4月に設置された国のAI研究の司令塔組織の議長に、日本学術振興会理事長の安西祐一郎氏が就任した(5月16日)。

 自動車はAIによる自動運転が秒読み段階に入り、株式や債券などの運用もAIが行うようになり、機能性材料の開発もマテリアルズ・インフォマティクス(MI)というAIが行うことができるようになるのだという。すでに、チェスや将棋ではAIが人間のプロに勝つことが当たり前になり、「向こう10年は人間に勝つのは無理だろう」と言われていた囲碁ですら、グーグルのAI「アルファ碁」が世界トップ級の囲碁棋士に勝利してしまった。

 韓国生まれの美術家の李禹煥(リ・ウーファン)氏は、5月15日付日経新聞の『人工知能と美術家』というコラムで、「人間の考えや意志には限界があって も、世界との出会いは無限である。つまり未知への好奇心に燃える生きた存在であること。そして絶えず無意識の刺激に突き動かされる表現を自覚する時、人間 は決してAIの侵すことのできない聖域に思えてならない」と主張した。

 しかしソニーは、コジタイという米カリフォルニア州のベンチャーと、環境の変化に応じて自ら考えて機器やサービスの新しい使い方を示すAI、名付けて「好奇心を持つAI」を開発すると発表し(5月18日)、同月19日夜には東京藝術大学の音楽ホール(奏楽堂)で、ヤマハが開発した人工知能演奏システムを搭載したグランドピアノと人間が共演する公演が開催された。

 筆者は李氏の主張に賛成したい気持ちもあったが、現実は好奇心や芸術にまでもAIは侵食してきている。もはや、人間はAIとの競争に勝つことなどできないと思い始めていた。

AIに対する誤解

 このようにAIまみれとなっていた私のもとに、『日立評論』(4月号)が郵送されてきた。これは日立の技術や製品を紹介する論文誌であるが、同号は前出・矢野氏が監修したAI特集号となっていた。そのなかで矢野氏が書かれた単著の論文『AIで予測不能な時代に挑む』を読んで、衝撃を受けた。

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