専門知識の終焉…プロ囲碁棋士に勝った人工知能(AI)、開発チームに囲碁プロ級おらず
IoTがよくわからない
『データの見えざる手』(草思社)の著者で日立製作所の矢野和男氏は、次のように述べている。
「この10年、ユビキタス、センサーネット、M2M(Machine-to-Machine)、ビッグデータ、IoT(さらにはIoE)などの言葉が躍ってきたが、その説明図を見るとどれも同じで驚くほど変わっていない」
「言葉に新鮮味が無くなると言葉を変え、目の付け所を変えてきただけだ」
「これは、実は上述の絵が、これまで実現しなかったことの裏返しになっている」
「その本質は、どうやって『稼ぐ』かが分からなかったからだ」
矢野氏の指摘には頷かざるを得ない。そして、筆者も「IoTの本質とは何か?」「IoTで稼ぐにはどうしたらよいか?」がわからなかったひとりである。
IoTは未来を予測する
そのようななか、2015年1月3日に放送された『NHKスペシャル ネクストワールド 第1回 未来はどこまで予測できるのか』を視聴して、やっとIoTがなんたるかがわかってきた。
IoTの本質を示すキーワードは、「センサー」「ビッグデータ」「人工知能」の3つである。そして、IoTによって実現されることとは「未来予測」である。
同番組が取り上げていた未来予測の実例を以下に示そう。まず、犯罪数が多く警察官の数が不足していた米カリフォルニア州サンタクルーズで、AIによる犯罪予測システムを導入した事例である。
年間12万件ペースで発生している過去の犯罪記録をすべて人工知能に読み込ませた上で、「どこの街灯が故障している」「バーの開店時間は何時」など、センサーを通じて街中のビッグデータを収集する。人工知能は、過去の犯罪記録をパターン化し、現在のビッグデータと照合して、いつ、どこで、どのような犯罪が起きそうかを予測する。ただし「なぜ起きるか」という理由は示されない。
人工知能が予測した犯罪予測マップに従って、警察官がパトロールするようになると、予測システム導入前と比べて、逮捕者数は5割増加し、犯罪率は2割低下したという。30年後は犯罪が起きる前に逮捕が可能になるかもしれないそうだ(それは果たして犯罪なのだろうか?)。
もうひとつの例は、ヒット曲の予測システムだ。人工知能にクラシック、ジャズ、ロックなどありとあらゆるジャンルの300万曲をインプットした。すべての楽曲はメロディ、リズム、オクターブなど70の要素に分解し、ヒット曲のパターンを分析する。すると、ヒット曲は60のカテゴリに分類できるという。ただし、「なぜヒットしたか」は示されない。