見た目が悪いと得をすることもある
ビジネスシーンにおいて見た目が重要ということは、よくいわれます。一般的には見た目がスマートな人が優秀そうに見える、という意味合いで語られます。ですが、太っていて見た目がスマートでない場合でも、得をすることがあります。
ヘビースモーカーであったり、常時睡眠不足であったりする場合と同様に、太っていて不健康であったり、猛暑日の逃げ場がないようなとんでもなく暑苦しい状態であると、いわゆるハンディキャップ理論が勝手に作用することがあります。周囲が「あの人はハンディを自ら背負ってもそれを跳ね返すくらいに、がんばってきたんだなあ」という目で見てくれるような効果です。
「この暑いなか、汗だくになって苦しそうなのに、明るくがんばっているなあ」「見た目が良くないのに今のポジション・仕事に就いているなんて、よっぽど仕事ができたり頭が良かったりするんだろうな」といったように、ポジティブな印象を勝手に抱いてくれることがあるのです。
ところが痩せてしまうと、そうしたメリットはなくなってしまいます。それに合わせて言動を変えなければならないのですが、うまくいかなければ、周囲に違和感を抱かれます。
特に、取引先など新しい人との接点ができたときに、今までは「なんかこの人(太っていてルーズな印象があるから)大丈夫かなあ?」と、ハードルの低いところから始まっていたので、普通の結果を出しても「ちゃんとした人だったんだ。良かった」となります。ところが見た目がいいと、「いい感じの人だなあ。期待できる」としたハードルの高いところから始まるので、普通の結果を出しても「あれ? なんか普通。ちょっと見かけ倒しだったのかな」となります。
ですので、今までポジティブな評価を受けていた感覚で結果を出しても、そうならなくなってしまいます。痩せた本人がすぐそれに気づいて修正していければいいのですが、長年身につけた癖を直していくことは、ダイエットと同じかそれ以上の難しさかもしれません。
飲食の席などで女性の同僚に対し、冗談の延長でセクハラすれすれの発言をするシーンでも、その現象はよく現れます。太っている中年男性は性的なアピールが薄いように見られがちなので、少々のことを言っても「もー、やめてくださいよ」で終わるようなことがあります。しかし、同じことを痩せてカッコいい中年男性が発言すると、「え? この人ひょっとして、いい歳なのに私のことを何かいやらしい目で見ている? 家族がいるのに、最低」といった具合に、冷ややかにネガティブに受け止められてしまうことがあります(もちろん、太っていようが痩せていようが、「気持ち悪い」と思われることが一般的かもしれませんが……)。
こうしたメカニズムが働き、ダイエットに成功してハッピーなはずの元「中年太りのおじさん」は、ビジネスシーンでは少し調子が悪くなってしまうというリスクがあります。