電通の企業文化を体現する石井社長、社員過労死連発への責任感ゼロ…頑なに社内組織優先
今年、業績を大きく落とした、成長機会を逃した、企業価値を大きく毀損した、危機的状況に際して拱手傍観してしまい窮地に陥る状況としてしまった、経営者としての倫理にもとった、社会に大きな損害あるいはリスクや不安を与え強く指弾された――などの残念な結果を残した経営者を顕彰する、「2016年 経営者残念大賞」。
本連載ではこれまで、第3位にシャープの高橋興三前社長、第2位として三菱自動車工業の益子修社長兼CEO(最高経営責任者)を発表した。今回は輝くグランプリとして、電通の石井直社長を発表したい。
繰り返された悲劇に恬として恥じないブラック大企業
電通の東京本社などへの東京労働局の立ち入り調査が行われたのが、10月14日だった。さらに11月7日、厚生労働省が労働基準法違反の疑いで同本社や全国の支社に対して強制捜査に乗り出した。
労基法違反をめぐるこれだけの大規模捜査は異例のことであり、大きく報道され、年末の今に至るまで人々の記憶に強く残っている。
一連の捜査は、15年12月25日に飛び降り自殺をした電通新入社員・高橋まつりさん(享年24)の労災認定が、16年9月末に下りたことを契機とした。自殺に先立つ15年8月に、同社は労働基準監督署から違法な長時間労働について是正勧告を受けていた。そんな直接的な勧告があったにもかかわらず、高橋さんの過労死を起こしてしまったため、本件は重大な問題として取り上げられている。端的にいえば違法性が大きく、悪質だということだ。世の親の立場からも、東京大学まで行かせた若い娘が著名企業に入社してわずか半年ほどのうちに早世してしまうなんて、と同情と憤激に堪えない事件だった。
電通が強く指弾されているのは、高橋さんの過労死の過程で当局からすでに行われていた是正勧告を実現できなかったというコンプライアンス非遵守の問題に加えて、過去に社員の過労死が繰り返されてきた点だ。
東京本社に勤務し13年6月に病気で亡くなった男性社員について、三田労基署が今年、長時間労働による過労死と認めて労災認定をしていた。会社側は「ご遺族の意向で詳細については明かせない」などとしているが、労災申請があるまで遺族側が会社に対してコンタクト、交渉があったと誰でも推測するだろう。