「女子アナの罰」と題されたTwitterアカウントの存在が、テレビ東京内部に波紋を広げている。同アカウントでは、女性2人の雑談を録音した音声ファイルが公開されており、同局の番組名や制作現場の内部事情、女子アナウンサーの実名が挙げられている。インターネット上では「テレビ東京の現役女子アナの雑談が盗聴されたものを誰かが意図的に流出させたものではないか」との疑惑が広まっている。
このアカウントは9月2日ごろに開設され、7日までに計10本の音声データが公開された。音声内容の一部を書き起こしているほか、「なかなか伸びませんねえ」などと拡散を煽る投稿もしていた。
「あいつはアナウンサーの仕事を舐めている」
では問題の音声データではどんなやり取りがなされていたのか。以下、一部抜粋して記載してみる。なお、実名と思われる部分は名誉棄損に当たる可能性があるため、当サイトで省略、伏せ字にした。
発言者:1「アナウンス部で最初Aさんと話しててめっちゃ怖くて、競輪見たよって。何話せばいいかわかんなくて、こわって思って。その時アナウンス部にBさんとAさんしかいなくて、『居づれー』と思って、気まずいからお菓子食ってたの。そしたらAさんが来て『大丈夫?』って。(略)ダンスとかモヤさまで出てて、(発言者1)は大丈夫?って、超励まされた」
発言者:2「いやアナタとは違うからって感じじゃない?(略)いやアナタとは違うから、一緒にすんなって」
発言者:1「てか自分と重ねてんじゃない?Aさん一応同期じゃん? Cさんおっぱいで出てて、Dさんモヤさまだから、Aさん自分と重ねてんでしょ。でも全然違うから。だってAさん暗いじゃん」
発言者:2「てかマジあいつさー。『終わったくない? マジで終わったくない?』と思ってる私は。暗黒期だから」
発言者:1「終わったよね? だってあいつアナウンサーの仕事舐めてるじゃん。え、何であの人なの? マジでわかんない」
発言者:2「編成局専任なんちゃらみたいな」
発言者:1「あいつアナウンサーの仕事舐め腐ってんじゃん」
発言者:2「てかEさんめっちゃ怖かった。アナウンサーは制作だから。タレントじゃないし自分の話しなくていいからみたいな。いやいやFさんめっちゃタレントだったからって思ったんだけど」
発言者:1「お前の感情押し付けんじゃねーよ」
発言者:2「めっちゃ毛深いし超怖かったー。途中からサルに見えてきた」
そのほか、聞き取れた内容の中には以下のような愚痴も収録されていた。
「先輩とかにこういう練習しなって言われてもさ、練習したところで何になるの?って」
「私は結婚して適当な事務所入って土日だけ働くつもり。そのためにテレ東で実績を作ろうと思ってやってるから」
「絶対誰も長く働くつもりないし」
「愚痴も言えない息苦しい環境になることを危惧」
テレビ東京制作局関係者は次のように憤る。
「問題の発言をしている女性2人は、アナウンス室の若手だといわれています。今回の一件で、社内に微妙な空気が流れているのは確かです。悪口を言われた側からすれば面白い内容ではないし、不快な気分になっているのは当然だと思います。ただ当事者以外の局員の多くは、発言者2人の罵詈雑言に対する憤りというより、『誰が、何のために、社内不和の種をまいたのか』という困惑のほうが強いと思います。
はっきり言っておきたいのは、先輩や上司、会社に対する愚痴はどんな会社の新人でも気の置けない同期とするものだということです。我々が新人で仕事がつらかった時、同じように『こんな会社辞めてやる』『あのCP(チーフプロデューサー)は許せない』などとしょっちゅう愚痴っていましたしね。
会社や上司、先輩、同僚を誹謗中傷するのは褒められた行為ではありませんし、発言者の2人を擁護するつもりもありません。そういう陰口が広がっていき、多くの他の局員や関係者が同調して、社内いじめに発展するようなことはあってはならないでしょう。
一方で、この音声はアナウンサーが休憩に使っているアナウンス部署内にある発声室で録音されたものだと思われています。社内の限られた関係者でなければ立ち入ることのできない場所です。
しかもLINEなどのSMSを使って、悪口仲間を増やしたり、同調する意見を集めたりする性質のものとは違い、あくまでその時だけの休憩中のプライベートな雑談で、この音声がなければ2人以外にその発言内容が広がるものではなかったでしょう。悪口を言われている当人もまた知らないで済んだことです。それを全世界公開のTwitterにさらすというのは明確な害意を含んだ悪質な行為だと思います。
むしろ、先輩や上司に関して、一言も愚痴を言えない息苦しい環境のほうが、よほどディストピア的で問題だと私は思いますけどね」
他企業、政府の機密を扱うテレビ局が盗聴される深刻さ
報道局関係者も次のように話す。
「局内にはICレコーダーはもちろん、録画、録音できる機材が溢れていますからね。誰だってやろうと思えば、これくらいのことはできると思いますよ。だからこそ、今回の一件は非常に怖い。
今回の音声は、社内的に強い立場の人間が、弱い立場の人間にパワハラとかセクハラをしていることを告発するというたぐいのものでもありません。だから『どこで盗聴されているかわからないから、社内では仕事の要件以外は一切しゃべらないほうがいいいんじゃないか』などと動揺が走っています。うちの会社は良くも悪くも自由闊達な社風だったと思うのですが、この一件で疑心暗鬼が広がり、人間不信に陥っている社員も見られます。
いずれにせよ、多くの個人情報や企業や政府の機密情報を扱うテレビ局の内部で、盗聴事件が起き、それが勝手に世間に公開されたという事態は深刻です。公開された音声が、他のもっとコアな情報だったら総務省が出てくる案件になりかねません。内部調査はもちろん、警察への相談も含めて社として対応すべき案件だと思います」
前代未聞の今回の騒動、他局からはどうみられているのだろうか。
「他の在京キー局のアナウンサー部署は、上司と部下の関係がわりとはっきりしていて、特にTBSやテレ朝あたりは厳しい。そして局によって多少の違いはあるものの、基本的には“アナウンサーは報道に携わる職”という認識が強く、“会社の組織”として統制が取れています。
一方、他のキー局と違いテレ東にはそもそも報道番組や情報番組が少ないこともあり、アナが活躍できる機会が少ないため、仕事の取り合いや足の引っ張り合いになりがちで、アナウンサー室の空気はかなり悪いことで有名。まさに今回の音声のような会話が埋まれる土壌があるんです。また、どうしてもバラエティなどの仕事の比率が高くなってしまい、他局と比べて空気が緩みがちという面もあるでしょう。
テレ東の人気アナだった鷲見玲奈アナの不倫疑惑が昨年12月に報じられましたが、その内容は2年も前に鷲見アナと上司が同僚たちを交えてカラオケ店に行った際に不適切な行為に及んだというもの。ごく一部の関係者しか知り得ない情報が2年もたって週刊誌に出たということで、当時は鷲見アナを妬む局内の女子アナあたりが情報を流したのではないかという見方も強かった。
実際に鷲見アナはテレ東退社後の今年6月、自身のTwitterで意味深な投稿をして注目されたこともありましたが(編註:『いろいろあった後輩が、私の行っていたジムに<鷲見さんには内緒にしてください>と言って通っているらしい。すごいメンタル…』『鷲見さんがいなくなれば自分ができる番組が増えるって言ってたのも、プロデューサーにアピールしてたのも、知ってるんだからねっ』と投稿。現在は削除済)、鷲見アナの退社の要因にも、こうしたテレ東アナウンサー室のドロドロがあったのだといわれています」(テレビ局関係者)
テレ東の見解
テレビ東京ホールディングス広報局広報室に見解を求めたところ、担当者は次のように述べた。
「その件に関してはお答えすることがございません」
多くの情報を取り扱うテレビ局としての信頼性にもかかわる案件だ。事件の顛末が明らかになることを祈るばかりだ。
(文=編集部)